ArayZオリジナル特集

タイの会計・税務 概観

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Q. 個人所得税
日本からタイに出張者を派遣しています。この出張者の所得に関する個人所得税に関しては、タイに180日を超えて滞在しなければ納税しなくても良い、という解釈で合っていますか?

A.必ずしもそうとは言い切れませんので、自社の状況に合わせて検討が必要です。

そもそも、タイ国の税制上、日本からの出張者であっても、当該出張期間におけるタイ国における就労に基づく所得はタイ国内での個人所得税の課税対象となります。他方、このタイの税制をいわば『上書き』する取り決めとして、日本とタイの間の課税に関する条約(日タイ租税条約)があり、この中で、タイにおける就労に基づく所得であっても、以下のような条件を全て満たす場合はタイで個人所得税の課税が免除されるという取り決めになっています。

①当該日本人が一暦年中にタイに滞在 した期間が180日を超えないこと

②当該所得が日本法人によって支払わ れること

③当該所得をタイ法人が負担しないこと

これを踏まえると、例えば当該出張者がタイにいる期間が180日を超えず、給与についても全て日本法人持ちにしている、といった場合であれば、原則『タイにおける納税は不要』と言うことになるといえるでしょう。他方、当該出張者がタイにいる期間が180日を超えない場合であっても、出張中の支払いについてはタイ法人払いにしている(上記②を満たさない可能性)、であったり、一旦日本法人が支払うものの、最終的にタイ法人に付け替えをしている(上記③を満たさない可能性)といった場合は、タイでの個人所得税の申告義務が発生する可能性があるといえます。

個人所得税の納税義務は『個人』に帰属しますので、出張者の方が無意識のうちに納税義務を怠っているという状況になってしまっていることも考えられます。
コンプライアンスの観点からも、自社の状況に鑑みた適切な対応を行うことが求められます。

VAT Q.
タイにおけるVAT制度はややこしいと聞きました。日本人マネジメントとして、とりあえず気を付けておいた方が良いというポイントは?

A. ポイントとして次の3つが挙げられます。

①書類要件の複雑さ
タイにおけるVAT課税は全てタックスインボイスというVAT帳票に基づいてなされます。タックスインボイスの要件は法令によって厳格に定められており、不備がある場合はタックスインボイスとして使用できず、仕入VATが控除できない(つまりその分損をする)状況になることもあり、経理担当者や会計事務所はこの書類要件を満たすタックスインボイスの入手に厳格になる傾向があります。

結果として、VATの処理には非常に時間がかかること、及び、サプライヤーに対して厳しくタックスインボイスを要求したり、日本人に対してもこの要求が来ることがあることを認識しておくとよいでしょう。

②課税対象取引の範囲について
VATの課税対象取引(7%の税金がかかる取引)は『タイ国内での物品販売&サービス提供』『物品及びサービスの輸入』である一方、『物品輸出』や『サービス輸出』に関しては0%課税取引として7%のVATを実際には徴収しない取引になります。ここで、0%課税取引となる『サービスの輸出』は『タイ国内で提供されるが、タイ国外で使用されるサービス』として解されています。

一方、これが自社の場合はどういった取引を指すのかについてはケースバイケースで判断するべき内容になりますので、自社の取引内容に照らしてその内容を検討しておく必要があります。

③VATを実際には支払うことになる取引について
VATに関する実務に関しては、通常自社の発行した売上に係るタックスインボイスに係る売上VATを計算し、そこから他社から入手した支払に係るタックスインボイスに係る仕入VATを控除して支払VATを決定するという方法がとられます。他方、自社が無償・低廉による物品・サービスを顧客に行った場合、タックスインボイスは当該取引金額に基づく金額で発行されます。(無償であればタックスインボイスが発行されない場合もあるはず)。

一方、税務担当官から市場価格を基準とした金額に基づく納税を要求され、実際には取引金額より大きい金額に基づくVATを納税を行う必要が生じたりします。このように、VATを支払う必要がなさそうな取引であっても、実際にはVAT対象取引である場合がありますので、注意が必要です。

※注
本稿は、一般的な事項についての情報提供を目的として作成されたものであり、実際の遂行にあたっては、多くの場合関連法規の検討、並びに専門家との協同が必要になります。このため、執筆者並びにその所属先は、本稿の利用に起因する如何なる直接的・間接的な損害に対しても一切の責任を負いかねます。また、本稿記載の情報は作成時点における調査に基づいたものであり、随時更新される可能性がありますことをご了承ください。

BizWings (Thailand) Co., Ltd.
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倉地 準之輔CEO & Founder
1980年生まれ。大学在学中に公認会計士二次試験合格後、あずさ監査法人(KPMG)入所。外資系企業勤務を経て、2013年来タイ。外資系会計事務所のジャパンデスクにて日系企業向けコンサルティング業務に従事した後、2015年10月にBizWings (Thailand) Co., Ltd.を設立。主に日系企業向けに管理業務に関する経営コンサルティング業務を提供し、現在に至る。公益財団法人東京都中小企業振興公社タイ事務所経営相談員。公認会計士(日本)。東京大学経済学部経営学科、米ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。

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※倉地氏は、東京SMEタイ事務所の経営相談員として木曜の午後在籍。
※経営相談は、相談に対する助言・アドバイスを行うものであり、公社は経営責任を負うものでは
ありません。

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