ビジネス・経済 2019.06月号

アジア現法が、本社の変革を牽引せよ!

今が最後のチャンス

私は、2008年までシンガポールを拠点に米系の組織人事コンサルティング会社のアジア統括として活動してきました。その後、一旦東京に拠点を移したのですが、昨年より再び、シンガポールと東京の両拠点でアジアの日系企業の経営指導に関わっています。そのため、この10年間の日系企業の変化を比較しやすい立ち位置にいると思います。

しかしこの10年間、日本本社とアジア現法のグローバル化への変化は鈍牛のごとくで、全くスピードが足りていなかったことに愕然としています。

本来なら景気がようやく回復し追い風を受けているときにこそ、失われた20年を取り戻すべく、思い切った組織の改革、或いは組織・人材面へ投資を行わなければならないのに、そのチャンスをスルーしてしまったかのようです。

この間、中国企業の台頭は目覚ましいものがありました。アジアのそこかしこにある建築現場は、ほとんど中国ゼネコンが工事を担当しています。また、世界的なビジネススクールが注目しているのは日本企業ではなく、アリババやファーウェイといったグローバル市場に思い切ったギアチェンジをしている企業です。今や完全にスケール負けしてしまっていると感じます。

ところがまさに今、政治的な要因や急成長の反動から、中国企業の勢いが少しスローダウンしています。

そこをチャンスだと日本企業は考えるべきです。もうここは最後のチャンスです。ここで思い切って大きな一歩を踏み出さないと、これ以降はほとんどチャンスが巡ってこないだろうと思います。

「本社が主導するもの」という前提を捨てて、前に進もう

では何をやらなければいけないか。

まず、日本の本社の準備や変革が先で、それから海外現法に波及させていくものだという前提を、捨てることが必要でしょう。日本本社が、グローバル機能、グローバル人事を主導していくというやり方に無理があることは、もうわかっています。

順番はむしろ逆で、まず現法が思い切った現地人材投資や組織変革などにドライブをかけ、その勢いで本社のグローバル機能を牽引していく、という発想をしていくべきだと思います。

もちろん、日本の国内において、グローバルリーダーを育てようという取り組みは必要です。しかし若手に対してであればともかく、40代も半ばを過ぎたマネジメント層へのグローバル対応の教育は、Too lateです。かつてはリーダーに必要な要素はIQ、EQだといわれていました。最近ではそれでは足りない部分が認識され、カルチャーインテリジェンス(CQ)、さらにはグローバルインテリジェンス(GQ)の必要性が認識されています。CQやGQは、40代半ばを過ぎてから身に着けるには、時間がかかりすぎます。

その予算はNSのキーパーソン育成に持ってくるべきです。その方が、グローバル機能を担う要員育成としての投資効果は、絶対に高いと確信できます。

「助けてもらう」つもりで、現地リーダーを育成せよ

現地の人材は、すぐに辞めてしまうので人材投資をためらってしまう、という意見もありますが、それは育て方が間違っているから辞めてしまうのです。

彼らはアンビションをもっています。先が見えなかったら辞めるのは当然です。

まずは、自分たちのやり方をNSに教えてあげるというスタンスではなく、将来を託すとか、自分たちを助けてもらう、というくらいの気持ちで人材育成にあたるべきです。そんな意識で接すると、NSにとってもCareer Opportunitiesとしての日本企業の見方も変わってくるはずです。
タイに赴任してきた日本人の方達は、選抜された優秀な方々でしょう。皆さんがタイに赴任されたのは、この地でこの新しいミッションを遂行するために来たのです。

そのことを自覚して取り組むべきですし、取り組んでほしいと思っています。


早稲田大学ビジネススクール 教授
株式会社セルム アドバイザリー
大滝令嗣

元.マーサージャパン代表取締役社長
2000年より代表取締役会長兼アジア地域代表。05年にヘイコンサルティング・アジア地域代表、08年にエーオンヒューイットジャパン代表取締役社長。
シンガポール南洋理工大学-早稲田大学ダブルMBAプログラムのプログラムディレクター。

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