ArayZオリジナル特集

日系製造・販売業の今がわかる タイの産業界事情

【デジタルカメラ】スマートフォン普及により全ての人がターゲットとなる市場

arayz nov 2014 tokushuOlympus (Thailand) Co., Ltd.
Imaging Products Division
DIRECTOR ANDDIVISION MANAGER
池田 真祥

近年のスマートフォンの普及にあたり、デジタルカメラ市場に変化が起きている。スマートフォンの影響が顕著に現れているのが、コンパクトデジタルカメラだ。スマートフォンに搭載されるカメラ機能の充実と手軽さから、この市場は急激に縮小している。
一眼レフデジタルカメラ市場についても、昨今は微減傾向にあるという。その背景にあるのは2008年に登場したミラーレス一眼デジタルカメラの存在だ。一眼レフカメラで使用されている撮影用レンズの入射光を光学式ファインダーに導くための反射ミラーが存在しないことに由来するレンズ交換式デジタルカメラで、反射ミラーがなくなったことにより軽量・スモール化が実現し、また高画質な映像が表現できると一般ユーザーにヒットしている。カメラ業界を代表する日系メーカーはミラーレス一眼デジタルカメラを次々に投入しており、オリンパスも2009年から製品を発売している。
オリンパスは内視鏡や外科手術装置などを扱う医療事業、生物顕微鏡や工業用顕微鏡などのを扱う科学事業、カメラなどを扱う映像事業の3つからなるグローバル企業だ。タイ現地法人Olympus (Thailand)  Co., Ltd. が設立された1999年当初は医療事業をメインに展開。映像事業についてはシンガポールの貿易商社「ジェブセン&ジェッセン社(以下、JJ社)」のグループ会社であるJJ・マーケティング(タイランド)社を正規代理店として展開していた。2012年、オリンパス(タイランド)社は映像関連製品の販売、マーケティングを担当する部門を新設し、ミラーレス一眼デジタルカメラに集中する体制に切り替えた。映像事業部門の池田真祥氏に話を伺った。

現地企業と良好な関係を構築し代理店から直轄へと転換

アセアンの中で最も重要となるタイ市場に注力するため、映像事業を代理店展開から同社直轄に切り替えた。
「タイでは進出時より他社と代理店契約を通して展開し、JJ社とは2005年から代理店契約を結んでいました。2012年から自社直轄の現在の業務形態に変更していますが、当社が入居しているオフィスは今もJJ社内にありますし、スタッフもJJ社から移籍した人が多いです」。
ユニークな形態を取っていることについて池田氏は、「映像事業部門を新設する際、人材や流通網などのインフラ整備ができる準備期間がほとんどなく、どうすれば立ち上げをスムーズにできるかと考えた時に今の形態となりました。JJ社とは長年の付き合いから信頼関係ができています。それにノウハウ、経験も積んでいる。
業務移管、移管後にもトラブルはなく、〝グッドネイバー〞な関係を続けています」。

デジタルカメラ市場のトレンドは日系メーカーが独占

日本メーカーは世界のデジタルカメラ全体の市場で8割以上、レンズ交換式市場では9割以上のシェアを占めている。ゆえに日本がトレンドを作り、それがアジア、北米、ヨーロッパなど世界に波及しているという。
「コンパクトデジタルカメラやミラーレス一眼デジタルカメラなど、市場の動きは世界共通で見られます。前期より構造改革に着手しており、中国と日本にある製造5拠点を中国深セン工場とベトナム工場の2拠点に集約しました。コンパクトデジタルカメラでは〝スマートフォン〞で代用可能なローエンドクラスの販売を止め、スマートフォンにない機能を搭載した製品に注力しています。現在はハードな撮影環境にも耐えるタフシリーズと、高画質と高倍率を実現したカメラへの二極化をとっています。一眼レフデジタルカメラの市場は、まだミラーレス一眼デジタルカメラよりも大きいのですが、市場が成熟しており、新しいものや驚きがもはやないのではと感じています。機動性と高画質を兼ね備えたミラーレス一眼デジタルカメラは顧客ニーズをキャッチし、市場は確実に成長しています。特に当社のマイクロフォーサーズシステムは本体が軽くて小さいだけでなく、交換できるレンズも軽量化することができ、まさにベストバランスのカメラだと言えます。そして、まだまだこの先も付加価値の高い提案を発信できる市場でもあります」。

CLMVを見据えるも成長が見込めるタイに注力

オリンパス(タイランド)社はミャンマー、ラオス、カンボジア、ベトナムを管轄しており、すでにカンボジアとベトナムには正規代理店が存在している。
「ベトナムとカンボジアは中間層が増加していますが、高級嗜好品であるデジタルカメラの市場はまだ小さいと思います。
ミャンマーに関しては将来的に進出を考えていますが、まだ具体的なビジョンはありません。まずはタイに注力することが重要と考えています。タイのデジタルカメラ全体の市場は成熟しているという印象ですが、ミラーレス一眼デジタルカメラのシェアの割合は増えていくだろうと予想しています。タイ人はスマートフォン所有率も高く、写真を楽しむ人が多い。その全員がカメラを楽しむというポテンシャルを持った人たちです。また、タイ人はミラーレス一眼デジタルカメラを〝かっこいい〞、〝ファッショナブル〞と捉えている傾向があります。当社ではメインシリーズとしてOM-DとPENという2シリーズを投入しています。現在、タイでは、一眼レフとミラーレス一眼デジタルカメラの全体で約10%のシェアを持っていますが、今後はOM-Dを中心にベースとなるカメラ本体のシェアを2倍へと引き上げることを目指し、新たな表現ができる交換レンズも続々投入します。カメラの〝面白さ〞をもっと提供できればと思っています。
世界的に言えることですが、スマートフォンの普及で人々の写真への興味は以前に比べ確実に増加しました。デジタルカメラは写真を楽しんでいる人全てがターゲットとなる市場だと思っています。ニーズを把握し、需要を喚起できれば、ミラーレス一眼デジタルカメラでの市場は成長が期待できると考えています」。

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