ArayZオリジナル特集

押えておきたい基礎知識&最新ビジネス事情 『1』から分かるミャンマー

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生産拠点、一大市場としてのメコン地域の将来

7月初頭、日本およびメコン地域諸国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナム)の首脳が集まり、東京で開催された第7回日本・メコン地域諸国首脳会議において、今後3年間の新たな戦略として「日・メコン協力のため新東京戦略2015」(以下、新戦略)が採択された。
日本・経済産業省はミャンマーの産業の将来像と実現に向けて、優先的に取り組むべき施策をまとめた「ミャンマー産業発展ビジョン」を策定。安倍晋三総理大臣からテイン・セイン大統領へと渡された。これにより日本政府は、ミャンマー産業基盤インフラの整備、産業人材育成などについて協力を進めていく。

メコン地域経済の重要性と課題

新戦略において、日本とメコン地域諸国は、メコン地域が〝ダイナミックな経済発展〞を遂げていることに加え、中国、インド、他アセアン地域諸国など、世界全体の人口の半分に当たる約33億人を抱えるアジアの巨大な新興成長市場の接しており、地政学的にも経済的にも非常に重要な位置を占めていることを改めて確認。さらに、メコン地域が世界の「成長センター」となる潜在性を有しているとの見方を共有したことが示されている。
しかし、メコン地域には解決しなければならない課題も存在している。新戦略では解決すべき課題を大きく二つに分け、第一として民主主義および法の支配の定着、人権の尊重ならびに平和構築の実現を目指すこと。第二に域内の膨大なインフラ需要への対応、域内外との連結性強化、投資環境の整備、特色を反映した産業構造の高度化とそれを支える産業人材育成、持続可能で環境に配慮した開発を行っていくことを挙げている。これらの課題を克服していきながら、安定かつ持続的なマクロ経済環境の維持、包括的かつ持続的な成長のためにメコン地域が地域全体でさらなる発展、〝質の高い成長〞を実現するために日本がメコン諸国と協力していくことが新戦略の前提にある。
今後3年間(2016年〜18年)にわたり、四本柱(右表)に基づき日・メコン間協力を実施していくことを表明、日本とメコン地域諸国が行うインフラ整備や人材育成、持続可能な発展に向けた取り組みなどが示された。また、日本は今後3年間で7500億円規模の支援を行っていくことも表明している。

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ミャンマー産業の将来像

日本・経済産業省は、ミャンマーにおける産業の将来像と、その実現に向けて優先的に取り組むべき施策をまとめた「ミャンマー産業発展ビジョン」(以下、ビジョン)を策定。
都市と地方のバランスのとれた発展を重要視するミャンマー政府の要請を踏まえ、ミャンマーにおける産業の将来像と、その実現のため優先的に取り組むべき施策を、関係省庁の協力の下まとめた。
産業レベルでの経済発展が見込まれるミャンマーには、インフラ・法制度、人材育成など幅広い分野にわたって、適切な政策の立案と実施が求められている。しかし、実施にはさまざまな課題が存在しており、解決にはミャンマーの経済・産業構造を段階的に高度化していくための成長戦略を策定し、一貫性をもって実行していくことが必要となる。
ビジョンでは次のような課題を指摘している。
①外資集積はティラワSEZなどで始まりつつあるものの、多額の投資を伴う長期ビジネスである製造業に関しては政策の予見可能性が乏しい状況にあるため、これを改善し、外資誘致とともに、国内民間企業の製造業参入意欲を飛躍的に高める必要がある。
②電力不足を背景に、電機・電子部品産業をはじめ停電を嫌う製造業の立地が進まないため、電源開発の加速が望まれている。これにより、冷温輸送体制、冷凍食品加工施設、水産関係の養殖・冷凍冷蔵・製氷施設、乳業施設の拡大への阻害が除去されるなど、第一次産業を含む各段階での産業発展、民生の向上にも大きな効果が期待できる。
③物流インフラが未整備であるため、陸送による物資へのダメージや、タイからの輸入よりも高い国内物流費によって国内産業が不利な立場に置かれている。また、農水産物などの都市部への輸送、市場開拓が困難である状況を踏まえ、農業、水産業の発展のためにも、物流インフラの改善が求められている。
④委託加工を請け負う企業に対し、原材料の全量輸入・完成品の全量輸出のみに関税などの免除を行う優遇制度を改善し、国内裾野産業の発展を促す必要がある。
⑤農村部からの労働供給の円滑な拡大と人材育成が必要となっている。
⑥基本的な技術・ノウハウが乏しいため、農業の生産拡大、品質向上が進まず、また農薬の過剰使用のため、安全面での問題がみられる。機械化の促進、基本的な栽培技術の知識などの導入、肥料・農薬の適正使用などを推進する必要がある。
⑦農家が有機農法を学んで実践しても、販売方法が従来のままであり、付加価値が適正に評価される市場にアクセスできないなどの現状を踏まえ、高付加価値生産物に見合ったバリューチェーンの構築が必要である。
⑧ミャンマー各地に残る伝統文化の洗練された意匠・技法が急速な工業化の中で失われつつあり、これらは一度失われれば、回復することは困難なため、本来これらの持つ世界の高級市場への訴求力を顕在化させる必要がある。
これらに関しては、ミャンマーの行政官が自らの手で政策を立案・実行することが肝要であるとしたうえで、課題に挑むに当たり、日本政府としても協力を検討する用意があると謳っている。

ビジョンが示す製造業の可能性

ビジョンではミャンマー国内の均衡ある発展を目指すうえで、都市部への製造業の集積は極めて重要としている。製造業の発展は、地方出身者を含む国民に安定的な雇用機会を提供、さらに比較的高水準の所得層の創出を通じて地方産品の消費市場を創出し、経済成長の恩恵を地方も含めた社会全体に浸透させる。また、付加価値の高い輸出産品を生産して外貨を獲得し、貿易赤字の削減とマクロ経済の安定を図り、経済成長の中核を担う産業金融・流通・法務などの関連サービス業を発展させることに繋がる。ゆえにミャンマーにおける製造業の育成は急務となっている。
競争力のある製造業の発展には電力・交通・通信などのハードインフラが必要不可欠だが、その整備はヤンゴンを中心に行われており、距離が離れるほどその恩恵からも遠ざかるのが現状だ。特に外資の誘致を念頭に置いた場合、多くの人口があり、一定のインフラ、産業集積が見られるヤンゴン、マンダレーはじめとする都市部に重点を置いた開発戦略が提案されており、それらを中心とした都市部に製造業を集積することが現実的となる。
今後のミャンマーにおける製造業の発展を検討するうえでは、周辺国との差別化が極めて重要な視点となる。さまざまな物資の輸入依存を解消、国内供給を実現するための内需向け産業を発達させることに加え、比較優位を生かせる輸出志向産業を育成することが重要と考えられる。
アセアン経済共同体(AEC)が発足すれば、アセアン域内の貿易はさらに円滑化される方向にあり、外資企業にとっても最適な製造拠点から域内各国に輸出することが容易となる。ミャンマーは地理的優位性を最大限発揮できるよう、周辺国間での車両乗り入れの合法化、物流インフラや通関制度の整備を進め、周辺国とのコネクティビティの向上に努め、タイをはじめとする産業集積と連携可能な地域・産業の発展を図る必要がある。
そこで大きな期待を集めているのが、ベトナム・ホーチミン、カンボジア・プノンペン、タイ・バンコクとミャンマーを結ぶ南部経済回廊の西の玄関口、ダウェー開発である。

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