ArayZオリジナル特集

企業ノウハウ、技術、製品、ブランドを守る 知的財産経営

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アセアン各国における知的保護の現状

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ジェトロ・バンコク事務所知的財産部
澤井容子氏

アセアンは連合体を形成しているが、経済発展度合はもちろん、言語、人種、宗教も多様である。知的財産制度についてもアセアン特許審査協力(ASPEC)のような取り組みがあるものの、現状、基本的には各国ごとの制度が優先されている。AECの発足後数年で、整合した知的財産制度ができるといった期待はできず、各国の制度下で自社の知財を適切に守るために対応策を講じていく必要がある。
各国の知財保護の現状はどのようになっているのか。アセアン諸国では、ミャンマーにはまだ知財法自体が存在しないが、ほかのすべての国では各種知的財産の保護に関する法律が存在する。さらに、アセアン諸国の多くは日本が加盟しているパリ条約をはじめとした知財に関連する各種条約・協定にも加盟している。つまり、一見アセアン諸国では知財法の制度は整備されているように見える。しかしながら、実際のところはというと運用や実務が伴わないことも多い。例えば、インドネシアでは税関における知財侵害品の取り締まりに関する法律が存在しているが、それを実施するための規則がないため実効性がなく、タイでは特許の審査が遅れており、権利化するまで時間がかかるため、模倣品が出てきても権利行使をすることができないなどの問題が発生している。したがって、アセアン諸国に進出する各企業は各国の知財保護の現状に併せて国毎に対策を立てることが求められる。

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また、特にタイをはじめマレーシアやインドネシアなど、急速な経済発展によりハイスピードで新興国の仲間入りを果たした国では、従来は模倣品の排斥や流入防止、国民の意識向上のための対策に投じる財源や時間が十分になかったが、現在状況は少しずつ変わってきた。
「タイ、ベトナム、インドネシアなどでは知財に関する執行専門組織の設置など、模倣品の製造やその取引に関与する違反者に対する取り締まり体制の強化が積極的に進められています」(高田氏)。
「アセアン諸国においては、近年、各国の特許庁などが中心となって知財に関する啓発セミナーを行っています。これにより、知財を活用することで自社の製品を守り、発展に繋げる企業が現れ始めています」(澤井氏)。
アセアン諸国においては知的財産権の出願件数が増加している。例えば、タイでは商標登録の出願件数が2013年は4万6097件であり、そのうち2万7881件は国内の出願人によるものであった。
また、タイにおける特許出願件数は2013年7404件とまだ日本に比べれば少ないものの、国内の出願人による出願件数は近年徐々に増えている。このように、各国企業ともに知財に対する意識は高まっていると言える。だが、その意識が高まる一方で知財を悪用する例もある。例えば、第三者に自社の商標を無断で登録されてしまい、自分の商標を使用することができない、高額な値段で買い取らされるといった事態も生じている。このような場合、相手の商標権を取り消すための手続きには前述のように費用も時間もかかることになる。したがって、アセアン諸国への進出に当たっては各国における知財権の登録状況にも注意する必要がある。
※参考:特許庁委託『アセアン・インド・知財保護ハンドブック』

次ページ:アセアン全体の制度取組状況と日本との関係

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