ArayZオリジナル特集

企業ノウハウ、技術、製品、ブランドを守る 知的財産経営

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アセアン全体の制度取組状況と日本との関係

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今年5月に奈良市で開催された第5回日アセアン特許庁長官会合

2011年8月、インドネシア・マナドにおいて開催されたアセアン経済大臣会合で、『アセアン知的財産行動計画2011-2015』が採択された。知的財産におけるアセアン地域全体の取り組み強化を目標に、28の計画とその達成目標を5つの観点から戦略目標に分類し設定されている。15年に発足するアセアン経済共同体(AEC)に向け、AECブループリントの下、策定されたアセアン知的財産行動計画2004-2010を踏襲し構築されたものとなる。
現在は『アセアン知的財産行動計画2016-2025』が策定中であり、15年11月に行われるアセアンサミットにおいて合意された後、16〜25年の間有効となる(前頁参照)。
また今年5月には、日本国特許庁とアセアン各国特許庁による第5回日アセアン特許庁長官会合が奈良市において開催された。同会合では15年度の知財分野の協力プログラムを策定するとともに、知的財産協力の深化を通じてアセアン経済共同体の実現に貢献することを確認し、『日アセアン知財共同声明』を採択。アセアンと日本における持続可能な経済成長のための産業財産権協力を目的に、アセアンと日本の長年に亘る強固な結びつきを踏まえ、アセアン加盟国の特許庁と日本特許庁との間で、①相互の発展のために産業財産権協力の更なる強化の重要性を再確認②貿易と投資の円滑化、イノベーションと技術移転の促進における産業財産制度の重要性③日アセアン協力プログラム2015-2016と、16年以降も産業財産権協力をさらに深化させること―などが盛り込まれた。

タイの模倣品流通状況

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タイにおける押収模倣品の破壊式典の様子

タイで模倣品が出回り始めたのは、欧米や日本製品の人気が高まった1980年代だと言われている。その後、タイ市場で模倣品が蔓延、政府の懸案となったのは90年代の中頃。現在もバンコクや地方都市の屋台、市場、ショッピングモールなどで模倣品や海賊版製品が販売されており、これら製品は、映画DVD、音楽CD、腕時計、衣料品、サングラス、ソフトウェア、ビデオゲームなど、多くの商品を網羅している。模倣品には、消費者が一見してすぐに模倣品と気づくような粗悪品もあれば、外観がオリジナル製品と似ているか、ほぼ同一であり、専門家や製造者でなければ識別は不可能なものも多い。このような模倣品は購入者が使用してみて、製品品質が悪いことで初めて模倣品だと気が付くレベルのものだという。
模倣品はバンコク都内で言えば、電気製品はパンティッププラザ、化粧品および医薬品はMBKショッピングセンター、自動車部品などはクロントーン市場などで多く販売されているという報告がある。2009年に行われた調査によれば、バンコク在住のタイ人のうち79.9%が模倣品を購
入したことがあり、それらのうち92.7%が模倣品であることを知った上で購入している。その理由は安いからであった。
ジェトロ・バンコクが昨年度行った調査によれば、模倣品の価格は模倣品の分野にもよるが、真正品の10%以下の価格のものが多かった。
これらの模倣品の存在により売り上げが減少するだけでなく、品質が悪い模倣品を消費者が使用した結果、「××社の製品は粗悪品である」というイメージが定着し、せっかく築き上げた信用を失うこともある。
「模倣品は深刻な結果をもたらすものも存在します。例えば模倣食品、模倣化粧品、模倣医薬品は健康被害を引き起こす可能性があり、大変危険で、なかには消費者が死亡するケースもあります」(高田氏)。
タイのソーシャルメディアでも一時期、偽物アダプターを使うと爆発するので絶対に買わないようにと盛んに喧伝されたこともあった。これらのタイで流通している模倣品は、タイ国内で生産されたものは少なく、約90%が中国製だと言われている。これは、中国は現在アセアン諸国よりも模倣の技術が圧倒的に高く、特に機械部品、電気製品などの模倣品はタイでは製造がまだ難しいためといわれている。
タイは直接中国と国境を接してはいないものの、近隣諸国から中国製の模倣品が流入してくる。模倣品の多くは港から入ってくるが、国境付近では、プーケット(タイ・マレーシアの国境域)、ウボンラチャタニー県(タイ・ラオスの国境域)、チェンライ県(タイ・ミャンマーの国境域)などが模倣品流入の多い地域となっている。
このため、税関における模倣品の差し止めが模倣品対策の一つとして有効であると考えられている。ジェトロ・バンコクでは、2015年6月に税関をはじめとするタイの知財関係執行当局職員約100名に対して、模倣品と真正品の見分け方を日系企業が説明する真贋判定セミナーを開催した。
このようなセミナーを通じ、タイの執行当局は模倣品取締りに向けたレベルアップを図っている。
中国で製造された模倣品はタイへの流入後、再び近隣諸国に輸出されることもあるため、このようなタイの執行当局のレベルアップはアセアン全体にも裨益するものとなる。
タイでの模倣品の摘発は執行当局であるタイ国家警察庁(経済警察)、法務省特別捜査局、関税局が権限を有している。
関税局は上述のように国境における模倣品対策を担っているが、タイ国内で流通しているものについてはタイ国家警察庁、法務省特別捜査局が担当する。これらの執行当局は年に2回程度、押収した模倣品(表1)の破壊式典をバンコク都などで行っており、押収したすべての模倣品がブルドーザーなどで破壊され、再利用されないように配慮されている。

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◇著作権侵害事件

タイ国家警察庁および法務省特別捜査局が2004年から14年にかけて実施した知的財産権行使に関わる事件の統計によると、国家警察庁と特別捜査局が実施した強制捜査の大半は、著作権に関わる事件だった。それらの著作権侵害事件のほとんどはタイおよび海外著作権所有者による映画、音楽、ソフトウェア、コンピュータゲームとなっている。
04年から06年までは著作権侵害事件数は大きな変化はなかったが、06年には多少増加。07年からは減少傾向を見せ始めた。翌年08年から11年にかけては安定していたが、12年に増加し始め、それ以来今日まで事件数は高い範囲にとどまっている。押収された著作権侵害製品数は04年から10年にかけて増加した。

◇商標権侵害事件

タイの知財関係執行当局はタイにおけるあらゆる種類の有名ブランドの模倣品を一掃するための努力を続けている。
同統計によれば過去10年間の強制捜査数は安定しているが、2012年および13年は特に活発であった。12年には強制捜査による模倣品の押収品が最高数を記録。これは過去10年間の平均の二倍の数となっている。

◇特許権侵害事件

特許権の対象となる製品は医薬品、化学品、自動車、エンジン、日用品など多種多様で、タイで販売されている製品のなかには、タイ知的財産局で登録された特許権を侵害している模倣品もある。特許法に基づく強制捜査は、その他法的根拠に基づくものよりもかなり少ない。2004年から11年に警察庁および捜査局が取り扱った特許権侵害事件は1年に10件以下であったが、12年24件、13年29件、14年13件と近年やや増加傾向にある。

※参考:ジェトロ・バンコク事務所知的財産部 タイにおける模倣品流通実態調査、東南アジアの知財状況

次ページ:タイで知的財産を守る

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