ArayZオリジナル特集

変わるモノづくり 製造業とIoT

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メーカーの「水平分業化」と「サービス化」が進んでいく

現在の製造業界では、各メーカーは垂直統合され、それぞれが生産の工程をになっている。また、各企業グループは ネットワーク化、スマート化することでグループ内での最適化を図っているが、この流れはベンダーロックイン(顧客囲い込み)やガラパゴス化の問題を引き起こすと予想されている。インダストリー4.0では、グローバルにつながるオープンなネットワークであるため、囲い込みは発生しない。さらには『協調』による参加せざるを得ない枠組みが作られている。

インダストリー4.0が進むことで、産業構造全体に変化が起きる(図表3)。各業務プロセスにセンサーやチップなどが組み込まれ、IoT化されることにより、メカ(機械)と制御装置(ソフト)は分離されていく。各業務プロセスはモジュール化(※)し 、そのモジュール間は標準化されたインターフェースで結ばれ、あらゆる企業はそのモジュールを組み合わせた集合体で製造を行っていくことになる。
モジュールは入れ替えや追加も容易であり、また、部品メーカーなどはそのモジュールごとに参入が可能になるため、水平分業化、オープン化が進んでいく。モジュール化は水平的、並行的な分業を可能にすることから、市場動向への柔軟な対応や、各モジュール間での提供・競争が活性化するメリットがあり、機能向上や低価格化が期待できるようになる。

モジュールには製品・部品レベルではなく、生産ラインレベル、さらには工場自体の組織レベルまでが含まれる。業務プロセス内で使用される部品、機器、装置なども標準化されていくことが想定されるため、機器間などの相互運用性確保の必然性も生まれてくるだろう。ビッグデータを取り扱うにあたり、情報の収集や分析を行う上で標準化されていれば、さまざまなデータを比較・検討することも容易なるはずだ。

業務のプロセスがネットワークに繋が り、産業全体が業務モジュールで構成されると、従来垂直統合であったメーカー業態は水平分業でスライスされていく。業務モジュールが独立可能になることで、従来型垂直統合で連結していた企業からメーカーは切り離され、『機能の貸し借り』とも呼べるアウトソーシング(外部委託)が進むとともに、それをサービスとして他企業へも提供していく流れができると考えられる。

製品についてもIoT化されることで、保守・管理などのアフターサービス、利用方法の提案、利用状況に応じた課金など、モノのサービス化が可能となる。 従来、企業が行っていた業務プロセス(モジュール)も、独立したサービスとして別企業が提供できるようになれば、業務の管理・運営が、インターネットを通じたサービスとして行えるのだ(図表3)。

arayz sep 2016

※原義は、基準となる長さ・大きさ・単位などを意味する言葉であったが、転じて当該基準で交換可能な単位・ 部品・かたまりを意味するようになった

GE社のサービスとしてのインダストリアル・インターネット

近年のGE社は〝新興国を含めた世界の社会基盤(インフラストラクチュ ア)整備に貢献する企業になる〞という 明確な戦略の下、航空輸送・交通ネットワーク、電力ネットワーク、医療ネットワークなど、社会システムの最適化を実現するソフトウェアサービス・プラット フォームを提供している。

GE社が考える〝インダストリアル・インターネット〞とは、産業革命とインターネット革命、2つの大革命の進歩を指す。つまり、産業革命によって出現した無数の機器、施設、フリートやネットワークと、インターネット革命によって 顕著となったコンピューティング、情報、通信の各システムの近年の進歩を統合したものだという。このインダストリアル・インターネットを具現化する主要要素としては、以下の3点を挙げている。

①インテリジェント機器:
高度なセンサ、コントロール、ソフトウェアアプリケーションで世界の無数の機器、施設、フリート、ネットワークを接続する新しい方法

②高度な分析:
物理ベースの分析、予測アルゴリズム、自動化と材料化学、電気工学などの専門分野の知識を生かして、機器と大規模システムの仕組みを理解する

③つながった人々:
産業施設、オフィス、病院で仕事中であっても、移動中であってもいつでも繋がることができるため、よりインテリジェントな設計、操作、保守を実現できるだけでなく、サービスや安全性の質を高めることができる

これらの要素をうまく組み合わせることで、リアルタイムに大量のデータを処理できるようになり、また、従来の統計的アプローチまで取り込む、新たなハ イブリッドアプローチを通じて、業界固有の高度な分析で履歴データとリアルタイムデータ、双方の利点を活用することができる。

インダストリアル・インターネットは、単純なものから非常に複雑なものまで、さまざまな機器にセンサなど、高度なインスツルメントを埋め込むことから始 まるが、単に最下層の機器にセンサーを組み込み、ビッグデータを収集し、それを分析することで機器の最適化を果たすことだけが狙いではない。インテリ ジェント機器レベル、システム機械レベル、運用レベル、全体システムレベルにおいて、設備資産の最適化、システム機械設計・保守の最適化、オペレーションの最適化、社会システムとしての最適化、というそれぞれの階層における最適化の実現を目指している。

「インダストリアル・インターネットはインダストリー4.0と比較して、生産自動化よりも、サービス化や効率化に注力した戦略と言えます。例えばGE社の航空分野でいえば、ジェットエンジンに多数のセンサを装着して得たデータを活用し、エンジンの予兆保全のほか、運航最適化支援サービスを提供しています」(図表4)。

arayz sep 2016

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