ArayZオリジナル特集

生産構造に変化が見えてきた タイとアジアの電気・電子産業事情

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arayz tokushu Oct2016

自動車産業に参入する電気・電子産業メーカーの動き

中国向け投資案件を個別にみると、家電、通信機器産業に加え、電子化が進む自動車向けエレクトロニクス部品産業への投資が含まれています。ドイツのレオニは2015年8月、遼寧省に5つ目の工場を設置し、BMWと中国企業の合弁会社に自動車用ケーブル・ハーネスを供給すると発表しました。また、アメリカのジョンソン・コントロールズも、同じく15年8月に、遼寧省にエンジンスタート・ストップ機能を装備する自動車用のバッテリー製造工場を設置。中国では日本の2.5倍以上、2400万台超の自動車を生産しており、その電子化に対応することは電気・電子業界にとっても一大市場を意味します。

タイをみると、電気・電子産業は日系企業にとって自動車に次ぐ重要な産業で、多くの企業の投資により幅広い裾野産業が形成されてきましたが、2011年末の大洪水をきっかけに企業の生産構造が変化しました。近年では、電子化が進む自動車産業向けに活路を見いだす動きがみえ始めています。

大洪水がタイの業界に与えた影響

タイ投資委員会(BOI)に認可された外国投資のうち、日系企業が全体に占める割合は過去10年間、一貫して3割を超えています。これを牽引してきたのは自動車産業であり、電気・電子産業が次いでいます。
電気・電子産業は、タイの工業生産に大きな影響を与えた外部要因として挙げられる、金融危機(2008年第3四半期~09年第1四半期)、東日本大震災(11年第1四半期)、タイ大洪水(11年第4四半期)の中でも特に、タイ大洪水の被害が甚大だったアユタヤ県、パトゥムタニ県などタイ中部に集中して立地していたことから多くの企業が被災し、ほぼ全ての主要品目の生産が落ち込みました。
しかし近年では、エコカーの普及や電気自動車の市場拡大により、自動車部品の電子化が進んだことで、自動車産業向けの集積回路などについては活路が見い出せているようです。企業の中からは「車載部品の売り上げが半導体全体の約半分に達しており、また当該分野の売り上げの増加が全体の売り上げ拡大に寄与している」(日系電子部品メーカー)との声も聞かれます。
自動車産業分野、あるいはエアコンや冷蔵庫など、関連部品産業の一定の集積が必要な分野など、タイが競争力を持っている分野に関しては、当面は他地域に生産を移す動機は働きにくいといえそうです。

発展には産業育成と他産業との連携、非関税障壁の撤廃が重要

2015年11月、タイ政府は企業の単独進出を促すこれまでの政策から一歩踏み込み、産官学の連携をつくり出し、中長期的に地域ごとに特色ある産業の育成を狙ったスーパークラスター計画を発表しました。この中では電気・電子機器や通信機器を含む4業種を地域ごとに奨励しており、大学や研究機関からのインターンの受け入れ、一定の要件を満たした奨励業種の企業に対する税制面、非税制面の恩典を付与する内容などが盛り込まれています。
電気・電子産業の集積を引き続き形成するには、競争力のある分野の集積を促し、自動車など、ほかのリーディング産業との連携を深めるような制度構築が求められます。企業としては市場や産業構造が日々変化する中で、どこで、何を作って、どこで売るのか、市場に適した生産体制を整えていく必要があるでしょう。
タイ政府およびASEANは現在、輸出入手続きの電子化や窓口の一元化、原産地証明書の自己証明制度の導入、非関税障壁の削減などによる貿易円滑化を推進しており、ビジネス環境の改善がさらなる投資誘致につながるものと考えています。

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※図表・データは、ジェトロ調査レポート「産業立地はどう変わるか」
電気・電子産業編(2016年8月)より引用

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