「貿易戦争」から「覇権争い」へ 米中の狭間で揺れるタイ  カシコン銀フォーラム

 カシコン銀行は18日、バンコクで米中貿易戦争に関するフォーラム「U.S. – China: Trade War to Tech War」を開催した。2大国の狭間で舵取りを迫られるタイの行方を、同銀リサーチセンターと商務省、国立チュラロンコン大学の有識者が占った。同銀のウィライラット氏が司会を務めた。

 米国が主導してきた世界秩序に挑戦する中国。覇権国の地位を脅かされている米国は、相次ぐ関税措置の実施に留まらず、安全保障面で懸念する通信機器大手ファーウェイなどのハイテク分野に矛先を向けている。商務省貿易交渉局ダイレクターのチュムラム氏は、「『貿易戦争』から『覇権争い』と呼べる新たな局面に入った」と警鐘を鳴らした。中進国のタイにとって両国は重要な貿易パートナーで、「どちらの国に付くかではなく、政府は国・国民にとって最善な方法で対処していく」と述べた。

 両国にとって不利益をもたらすと言われる貿易摩擦だが、タイにどのような影響を及ぼすだろうか。カシコンリサーチセンターのシワット副マネージングダイレクターによると、タイの輸出は製品の性質によってに左右される。対米向けでは市場に食い込んでいるHDD、プラスチック製品、水産物など、対中向けでは自動車部品、プラスチック原料などの輸出でタイに好機をもたらすとみられる。一方、米市場向けの中国製品に使用される電気・電子製品や自動車などの中間財が悪影響を受けると予測する。 

 中国から工場をタイなど東南アジアに移転する動きも加速しており、電気・電子製品とその部品やゴム加工製品の生産でタイに好機がある。ただ、東南アジアで最も恩恵を受けるのは低賃金のベトナムとなりそうだ。

 来年の米大統領選挙が米中関係の今後を左右すると指摘するチュラロンコン大学法学部講師で中国研究専門家のアーム氏。「両国は相互に緊密につながっている。(中国に比較的弱腰な)民主党から大統領が生まれると対立よりも共生の道を選ぶだろう」と予測する。ただ、次世代通信システムの5G技術や基本オペレーティングシステム(OS)については、「米欧と中国の2つの勢力に分かれ、我々は将来、2者択一もしくは両方を上手く使いこなさなくてはならない時代を迎えるかもしれない」と述べた。

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