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製造業のデジタル化と脱炭素化でセミナー開催 三菱電機がEECでの自動化システム導入の実績アピール

2022.05.31
製造業のデジタル化と脱炭素化セミナー

三菱電機のタイ法人、三菱電機ファクトリーオートメーション(タイランド)は520日、東部経済回廊(EEC)事務局と「EEC Connecting Thailand and Japan Collaboration 2022」と題するセミナーを開催した。日タイ修好135周年を記念した同セミナーは「製造現場のデジタル化と脱炭素化の実現へ」をテーマとし、当日はオンラインを含め、政府・民間部門から500人以上が参加した。

三菱電機はタイ企業60社超、世界の1000社と連携して、タイの製造業に先端ノウハウや技術を移転させることができたとアピール。さらに今後3年以内に500億バーツ以上を追加投資し、5万人以上の人材の育成、1万ヵ所以上の工場を同社の製造業自動化システム「e-F@ctory」水準まで高めることが目標だと強調。これらの結果、東部経済回廊(EEC)は先端的イノベーションを備えた工業団地としてアップグレードされ、タイの経済社会の強化につながるだろうとしている。またこのプロジェクトは、持続的発展に向けたカーボンニュートラルの実現、デジタル化の恩恵享受、製造業の脱炭素化を目指すものだとした。

EECオートメーションパークに期待

スパタナポン副首相兼エネルギー相

スパタナポン副首相兼エネルギー相

セミナーの開幕あいさつで最初に登壇したのはタイのスパタナポン副首相兼エネルギー相。同相は「日タイ両国は経済協力に緊密に取り組んでおり、新たなバイオ・循環型・グリーン(BCG)経済モデルとともに経済発展を加速させるためにサプライチェーンを統合し、グリーン社会に向けた脱炭素化を実行しつつある」と強調。一方、労働力不足に直面する中では「長期的な競争力を維持するためにコストを管理し、損失を減らし、製品・サービスへ付加価値を付けるために製造プロセスと管理の変革が必要だ」と指摘。変革にはデジタル化、高速大容量規格「5G」接続、ビッグデータ、オートメーション(自動化)、ロボティクスなどのイノベーションやテクノロジーが必要であり、三菱電機が主導する日本の民間企業と日本貿易振興機構(ジェトロ)との緊密な協力により、EEC内で実現したと評価した。その上で、「これらのメカニズムは、タイの産業変革や、国家戦略および経済社会開発計画に沿った『タイランド4.0』推進に不可欠だ」と訴えた。

梨田和也駐タイ大使

梨田和也駐タイ大使

続いて梨田和也駐タイ大使は「タイの産業発展の歴史は自動車産業を中心に、製造業に携わる日本企業とタイ企業が二人三脚で築き上げてきたもので、その主要舞台がEEC地域だった。今、製造業は『デジタル』と『グリーン』によるイノベーションで新たな局面を迎えている」と指摘。「製造業にとって、生産性を飛躍的に向上させるためには生産現場へのDXの導入が必要不可欠だ」とした上で、「こうしたモノづくりのアップデートには、長らくタイに産業アセットを築き上げてきた日本企業のノウハウに『一日の長』がある。特に、ファクトリーオートメーション(FA)では、三菱電機がEECのブラパー大学に設置した『EECオートメーションパーク』が、日タイの産学官が連携した好事例であり、こうしたクロスオーバーな協力案件が今後ますます生まれていくことを期待する」とした。

梨田大使はまた、タイの脱炭素化の取り組みを日本は官民を挙げて貢献していくとした上で、「日本の自動車メーカーはハイブリッド(HV)やエコカーなど環境負荷の低い製品を普及させてきた。バッテリーEVにおいても、日系メーカーはタイの自動車産業を牽引していくだろう。また、水素、燃料アンモニア、CCSなどカーボンニュートラル実現に不可欠な先進的なエネルギー分野においても、日本には有力なプレイヤーがたくさんいる。日本政府は、こうした分野において日本企業のタイでの挑戦を後押していく」と訴えた。

スマート工場、5年以内に1万工場に

その後、セミナーでは「EECのデジタル化と脱炭素化の推進」をテーマに3人が講演。まずEEC事務局のカニット事務局長は「三菱電機とそのアライアンス(企業連合)の協力が成功し、EECオートメーションパークはロボティクスと自動化の知識ハブとして構築された。これは、タイの産業部門がEECでのインダストリー4.0に向けて革新的製造方法を採用するスマート工場への変革を奨励するものだ」と評価した。また、日本の経済産業省、日本貿易振興機構(JETRO)、盤谷日本人商工会議所(JCC)と協力して、日本の投資家にロボティクス、自動化への投資と推進を呼びかけていると説明。タイのデジタル産業への投資額が3年以内に5000億バーツを超えるとキングモンクット工科大学トンブリ校のフィールドロボティクス研究所(FIBO)の予測を紹介。このうちEEC域内での5G、ロボティクス、自動化への投資は、年間500億バーツ以上になり、タイの人々に雇用と収入をもたらし、タイの製造業の競争力を向上させるだろうと述べた。

EEC事務局 カニット事務局長

EEC事務局 カニット事務局長

そして今年は「EEC内の200以上の工場を対象として、スマートオートメーション実現に向けシステムインテグレーション(SI)を導入する。2025年までには6000以上の工場が対象になる。『Digital Manufacturing 4.0』水準のスマート工場は、5年以内に少なくとも1万工場になると予想されている。これにより、生産コストの削減、機械の休止の削減、労働負担の軽減、エネルギーの節約などとともに、タイの産業部門のアップグレードに役立つだろう」との見通しを示した。

また、ジェトロ・バンコク事務所の竹谷厚所長は炭素削減に関する日タイ協力について、「20221月に日本とタイは、タイのBCG経済モデル、タイへの日本の民間投資、カーボンニュートラルを目標とする日本の環境にやさしい成長戦略などの重要政策を支援する覚書(MOU)に署名した」と報告。また、「製造業におけるデジタル化、自動化、労働集約度の削減はタイを強力なグローバルサプライチェーンのハブの地位を確立する『タイランド4.0』の鍵であり、 EECをその中心に据えている。これを支援するために、ジェトロは自動ロボット、日・東南アジア諸国連合(ASEAN)海外サプライチェーン創出、人材開発などの幾つかのプロジェクトを承認。さらに、日本企業とASEAN企業が協力してデジタル技術を用いた経済・社会問題への取り組みを実証する『アジアDX』推進プロジェクトを承認した」と説明した。

竹谷所長は三菱電機について、e-F@ctory(インダストリー4.0 + 5Gモデルライン)のコンセプトを開発し、企業連合と共同でブラパー大学にオートメーション、 ロボティクスについての人材育成および学習センターとしてEECオートメーションパークを設立したと改めて紹介。「その目的は、5G接続技術を組み込んだデジタル生産ラインの自動化によるタイの製造技術のレベルアップだ。また、25以上のカリキュラムを備えた、産業労働向けの自動化専門知識の開発ハブになることも目指している」と説明した。

カーボンニュートラルの達成も支援

三菱電機 FAシステム事業本部 古谷友明機器事業部長

三菱電機 FAシステム事業本部 古谷友明機器事業部長

続いて三菱電機 FAシステム事業本部の古谷友明機器事業部長が同社の具体的な取り組みについて紹介。「世界の製造業のデジタル化に合わせ、三菱電機は2003年に導入したe-F@ctoryコンセプトでFAITの活用で世界中の4万社以上の顧客を対象に製造プロセスの改善などの支援をしてきた。またASEAN、日本、台湾、韓国、インド、欧州、米国など世界の1050社以上の企業が参加する『e-F@ctory Alliance Partner Associationeファクトリー・アライアンス協会)』を設立。2019年にはタイでも同協会が設立され、現在までに60社がパートナーになっている。そこでは工場でIoTシステムをどの程度利用すべきかなどの工場管理計画を提示するために、SMKLSmart Manufacturing Kaizen Level)に基づく新しいソリューションを導入した」などと述べた。

さらに、「三菱電機は、包括的なCO2削減ソリューションと、工場の各種設備で使用されるエネルギー・炭素排出量を監視できるSCADAソフトウエアを提供している数少ないメーカーの1社だ。このソフトウエアは省エネ支援アプリケーション『エコ・アドバイザー』とも統合され、これらの優位性は欧州の自動車メーカーのカーボンニュートラルコンテストで高く評価された」と報告。タイ政府が2050年までにカーボンニュートラルを達成するための国家戦略としてBCG経済モデルを確立したことに対応し、「三菱電機はこの目標の認知を促進するために産業界を支援する準備ができている」などと訴えた。

デジタルマニュファクチャリング・エコシステムの育成の現状と今後について

このほか、「デジタルマニュファクチャリング・エコシステムの育成の現状と今後について」という題のセッションではタイのe-F@ctoryの全事業を統括する三菱電機ファクトリーオートメーション(タイランド)のウィチエン社長が、「タイの産業部門に自動化技術を導入する際のエコシステム構築で連携してくれたすべてのパートナー」に感謝の意を表明。「その技術移転は包括的で、ハードウエア、ソリューション、ソフトウエア、人材育成を含む」と指摘。その上で、「EECオートメーションパークはタイ経済を推進するEECの中心であり、数年以内に200ヵ所以上の工場をスマート工場に転換することが目標だ。タイの『インダストリー4.0』の目的は経済成長だが、企業の社会的責任も同様に重要だ。低炭素社会、カーボンニュートラルな社会を達成すると同時に、目標とする投資収益を生み出すことが本当の成功だ」と強調した。

同セッションにはEEC人材開発センター(EEC-HDC)の責任者であるアピチャート博士も参加し、「EECは先端技術産業で必要とされる人材の育成に関して日本政府や民間部門と協力している。3年間の目標は、5G、デジタル技術、およびネットワークについてのスキル(New SkillUp-SkillRe-Skill)のトレーニングを通じて5万人以上の人材を育てることで、三菱電機とeファクトリー・アライアンス協会が主導するEECオートメーションパークが取り組む。現在までに自動化のトレーニングを受けている人材は1000人以上で、2022年末までには2000人がトレーニングを受けられるだろう」との見通しを示した。

 

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