カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行経済レポート 2017年7月号

タイ経済・月間レポート(2017年7月号)

2017年5月のタイ経済情報

5月もタイ景気は引き続き拡大基調

2017年5月のタイ経済は引き続き拡大しました。海外需要が上向き続けていることにより、輸出が引き続き拡大しています。その結果、工業生産も上向きました。民間消費もサービス支出を中心に拡大しています。しかしながら、公共投資は減速し、民間投資は依然として低水準にとどまっています。

  • 2017年6月の消費者物価の上昇率は、5月の前年同月比0.04%減から同0.05%減となり、2ヵ月連続で下落しました。原油価格の低迷やバーツ高が進んだことが要因です。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.45%の上昇で、前月から伸びが横ばいでした。
  • 2017年下半期のタイ経済全体としては、引き続き回復軌道を辿っており、前半よりも拡大し、前年同期比3.4%増になると予測します。政府支出と観光業は引き続き拡大傾向にあります。一方で、民間消費は緩やかな持ち直しの動きを見せると予想します。消費者の家計債務負担により依然として消費者の購買力に下押し圧力がかかっているものの、経済回復と伴に改善しつつあります。
  • 2017年後半の世界原油価格は前半よりも低水準に推移する懸念がありますが、米国を始めとする世界経済が回復傾向にあるため、2017年後半もタイ輸出は拡大を続ける見込みです。とりわけ、集積回路や通信機器である電子製品の輸出は好調に伸びると予想します。
  • 従って、カシコンリサーチセンターは、2017年のタイ経済成長率の予測を前年比3.3%増から同3.4%増に上方修正しました。

タイ中央銀行が発表した2017年5月の重要な経済指標によると、前月と同様に輸出と観光業に支えられ、タイ経済は拡大を続けています。また、民間消費もサービス支出を中心に拡大しています。外需が堅調に回復し、工業生産も拡大に転じました。しかしながら、公共投資は減速し、民間投資も横ばいで推移しています。

5月の民間消費は前年同月比2.4%上昇しました。タイ人と外国人の旅行者増加に伴いサービス支出が同7.3%上昇しました。また、消費者信頼感の回復と農家収入の増加により、特に二輪車など耐久財の消費も同3.7%上昇しました。しかしながら、非農家収入は横ばいで、本格的な消費回復には至っていません。
一方で、民間投資は前年同月比0.5%下落し、前月比でも0.2%落ち込みました。低層住宅の開発減で特に建設が不調でした。しかし、通信とエネルギー分野の機械・設備投資は上向きました。

5月の輸出は、前年同月比10.6%増の198億米ドルとなりました。引き続き多くの製品で拡大しました。電子製品やエアコンをはじめとする家電製品、携帯電話、農業製品、二輪車、自動車部品などの輸出が好調でした。また、原油相場に連動して価格が変動する製品群の輸出は主に数量増から輸出が伸びました。
工業生産に関しては、前年同月比1.4%増となり、前月の1.8%減からプラスに転じました。集積回路・半導体が9.2%上昇したほか、石油、ハードディスク駆動装置(HDD)も、それぞれ7.1%、6.7%伸びました。また、輸出向け冷凍鶏肉、シート状ゴムなどの生産が伸びています。
観光業では、外国人観光客数が前年同月比4.6%増加しました。季節調整済みの前月比では、1.5%増となりました。ほぼ全ての国からの観光客数が増加しました。中国人観光客は違法ツアー摘発前の水準に回復しました。

2017年6月のタイのインフレ率

商務省が発表した2017年6月のヘッドライン・インフレ率は、5月の前年同月比0.04%減から同0.05%減となり、2ヵ月連続で下落しました。原油価格の低迷やバーツ高が進んだことが要因です。

品目別にみると、食品・飲料部門では、前年同月比0.7%の減少で、前月の同1.4%減から3ヵ月連続で縮小しました。米・粉製品と卵・乳製品が前月に引き続き落ち込んだことに加え、果物・野菜が同6.4%減と減少幅が大きかったです。一方で、非食品部門で構成品目の2割強を占める住宅部門が前年同月比0.62%上昇しました。そのほかは、運輸・通信が同0.03%上昇するなど、おおむね横ばいでした。
一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.45%の上昇で、前月から伸びが横ばいでした。

2017年7月の外為相場

米連邦準備理事会(FRB)は、6月14日に追加利上げを行ったうえ、量的金融緩和で拡大したバランスシートの縮小に年内に着手することを発表しました。これがドル高の要因になりました。円対ドルの変動について、7月13日には1ドル=113.3円の終値をつけ、6月13日の1ドル=110.1円からドル高傾向を見せました。
しかし、トランプ米国大統領の経済政策は進まず、米長期金利上昇は続かず、今後のドル高の傾向は継続しないと予想されます。

2017年後半のタイ経済は引き続き回復軌道を辿っている

足元のタイ景気動向を見ると、2017年上半期のタイ経済は予想よりも拡大し、従来予測である前年同期比3.1%増から、新たな予測の同3.3%増にのぼる見通しです。その主な要因は、自動車購入を始めとする民間消費の拡大、農業所得の増大、世界経済回復での輸出増加などによります。
また、観光業は、中国人向け「ゼロドルツアー」の取り締まりの影響がなくなり、以前の水準に戻りました。しかしながら、民間投資と工業生産は依然として低水準にとどまっています。

2017年下半期のタイ経済全体としては、引き続き回復軌道を辿っており、前半よりも拡大し、前年同期比3.4%増になると予測します。しかしながら、カシコンリサーチセンターは、2017年後半の一部のタイ経済部門に依然として警戒姿勢をとっています。とりわけ、民間投資の回復テンポ、供給過剰による農業所得低下の懸念、世界原油価格の低下による石油関連製品へのマイナス影響などがあります。

2017年後半のタイ経済成長は、政府支出が依然として最も重要な原動力であると見込まれます。それに加え、観光業の継続的な拡大傾向により、卸売・小売業、ホテル、レストランなどのサービス業にプラス影響を与える見込みです。

2017年後半のタイ輸出は、引き続き拡大傾向にある見通しです。2017年後半の世界原油価格は前半よりも低水準に推移する懸念があるものの、米国を始めとする世界経済が回復傾向にあるため、2017年後半のタイ輸出も拡大を続ける見込みです。とりわけ、集積回路や通信機器である電子製品の輸出は好調に伸びると予想します。通信機器はスマートフォンの生産拠点が日本からタイに再配置されたことで輸出が伸び続けています。
このことにより、カシコンリサーチセンターは、2017年通年のタイ輸出額の伸び率の見通しを従来予測である前年比2.0%増から、新たな予測の同3.8%増に上方修正しました。

一方で、民間消費は緩やかな持ち直しの動きを見せると予想します。消費者の家計債務負担により依然として消費者の購買力に下押し圧力がかかっているものの、経済回復と伴に改善しつつあります。

カシコンリサーチセンターは、2017年のGDPに対する家計債務の比率が昨年の79.9%から78.0~79.0%にとどまると予測します。このことにより、カシコンリサーチセンターは、今年の民間消費の見通しをこれまでの前年比2.2%増から同2.7%増に上方修正しました。

このような状況の中、カシコンリサーチセンターは、2017年のタイ経済成長率の予測を前年比3.3%増から同3.4%増に上方修正しました。

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