カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行経済レポート 2016年1月号

2016年のタイ経済は緩やかな回復基調が続く見通し

カシコンリサーチセンターは、2016年のタイ経済に依然として警戒姿勢を取り、2015年に比べ緩やかに改善すると予想しています。その主な牽引役は、政府部門の投資であり、前年比7.9%増となる見通しです。タイ政府は、モーターウェイやバンコク首都圏の電車路線開発などインフラ・プロジェクトに対し、官民連携手法(PPP:Public Private Partnership)により、25ヵ月がかかる審査手続期間を9ヵ月に短縮する「ファスト・トラック」の仕組みを設けました。
また、民間投資が経済成長を上積みすると見込まれます。公共投資の拡大および政府によ
る民間投資の刺激措置により、投資家の信頼感が改善傾向に転じ、全体的な投資環境が改善する見込みです。カシコンリサーチセンターは、2016年の民間投資は、過去3年連続で収縮したことから、プラス成長に転じ、前年比3.9%増になると予測します。

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タイの輸出に関しては狭い範囲で回復する見通しです。その主な要因として、中国や欧州などタイの主要な輸出相手国の経済回復が遅れる懸念があります。それに加え、2016年前半の世界原油価格は下振れや変動リスク要因が未だ存在していることにより、石油化学製品や天然ゴムなど多くの商品の価格に下押し圧力がかかると見込まれます。しかしながら、2016年後半に世界の原油価格と商品市況が安定に向かうとともに、タイの輸出は緩やかに回復する見込みです。カシコンリサーチセンターは、2016年のタイ輸出額は、前年比2.0%増になると予測します。
一方で、個人消費は、2015年に比べ横ばいとなる見込みです。消費者の信頼感の改善や石油価格が低位にとどまっていることも、家計消費を支援すると見込まれます。しかしながら、今年は干ばつが再び発生する見通しで、農業所得の低迷リスクが未だ存在しています。それに加え、家計債務の高止まりが依然として消費の下押し圧力になると予想します。カシコンリサーチセンターは、2016年のGDPに対する家計債務の比率が前年比83〜84%の水準で推移し、前年比5.0〜6.0%増になると予測しています。
また、2016年の個人消費は前年比2.1%増になると予測します。
タイの足元の景気を見ると、2016年の初めから、世界原油価格が急に下落し、中国経済減速の懸念も高まることにより、今年のタイの輸出および消費者物価に下押し圧力がかかると見込まれます。しかしながら、タイ政府は2016年度の投資向けの中間予算を560億バーツを追加し、タイ経済にプラス影響を与えると予想します。
従って、カシコンリサーチセンターは、2016年通年のタイのGDP成長率が通常ケースで前年比3.0%増になる予測を維持し、2015年の同2.8%増から緩やかに改善すると予測します。

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■タイ経済最新情報 1月号 2016/1/29 (No.119)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン

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