カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2015年1月号

近代的小売業における地方都市への投資拡大のチャンス

近年、タイの小売業、特に近代的小売業は、チェーン店を増やし続けています。これまで小売業がチェーン店の拡大を急いできたことで、国内の小売市場はまもなく飽和状態に達するのではないか、という疑問が生じています。確かに、バンコク首都圏および主要都市では大規模小売店の出店に適した土地を探すことがより困難となっています。しかしながら、そのほかの地域、特に中規模都市がある県は、都市化の進展や国境貿易などの支援要因により、今後、小売業拡大の重要なターゲットとなると見込まれます。
現在、消費者の購買力は、生活費や家計債務負担により下押し圧力がかかっているものの、小売業者は依然として新たな小売業の投資を計画しています。
その投資は、バンコクから離れて、国境貿易で成長傾向にある地域へ向けて拡大を始めています。ASEAN経済共同体(AEC)発足を迎え、インフラや地方の人々の所得などに変化が訪れるという見通しが背景にあります。これにより、消費行動やライフスタイルがより都市化し、地方の小売業は今後ますます成長するチャンスがあると考えられます。
バンコク首都圏の卸売・小売業のGDPは、地方都市との比較で、2010年の60対40から、2015年には55対45へと徐々に低下していくと見込まれます。また、一部の大手小売業の売上高を見ると、2010〜2013年に年間平均約17.5%成長しました。売上の増加の多くは、新店舗、特に主要な地方都市における出店を積極的に拡大してきた成果です。
このことにより、地方の支店からの収入が増加し、収入全体の65.0%を超えています。
カシコンリサーチセンターでは、ナコンサワン、ピサヌローク、ウドンタニなど中規模の県が、今後、小売業が成長する潜在力を有していると見ています。現在、これらの県における消費者の購買力は全国平均よりも低いものの、所得の増加率を見ると全国の平均値を上回り、2008〜2012年の年平均成長率の8.6%を超えています。
さらに、過去5年間の流通業の年平均成長率の8.8%をも超えています。
これら地域のほかには、ウボンラチャタニ、ナコンシータマラート、チェンライ、ウドンタニ県なども、人口が多く、消費者の購買力も年間平均10%以上増加しています。これらの県も、小売業の投資拡大における潜在力が高い県です。
また、ノンカイ、トラート、ムクダハン、サケーオなど国境に接している県も小売業が看過することができない地域です。これらの県における消費者の購買力は未ださほど高くはありませんが、国境貿易の活況に支援され、県民所得は徐々に増加していくと見られます。また、AECの発足は、これらの県の消費支出増に寄与するだけでなく、ミャンマー、ラオス、カンボジアなど近隣諸国の購買力の高い消費者グループを迎えるビジネス・チャンスでもあります。タイの商品は、これらの消費者グループに認知されており、人気が高いと見られます。今後、これらの県も小売業の投資における潜在力を有していると考えられます。

arayz kasikorn

■タイ経済最新情報 1月号 2015/1/30 (No.107)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン

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