カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2014年10月号

2014年のタイ経済成長率予測を1.6%増に下方修正

カシコンリサーチセンターは足元の景気について、国内支出が緩やかに回復を続けているものの、輸出と観光業の回復が予想よりも遅れているため、まだ経済主体の広範な改善をともなうものではないと見ています。
国内支出は非耐久財の消費支出、公共建設投資、さらには政府支出の拡大から徐々に改善しています。
その主な要因は、農民向けの生産コスト負担軽減措置(総額400億バーツ)、投資予算執行の加速、年末のショッピングシーズンの到来、比較ベースとなる前年同期の水準が低いことによる低ベース効果などが挙げられます。また、消費者の信頼感が改善を続けていること、非農林水産業の雇用と所得が上向き傾向にあること、国民の購買力を高める政府部門の措置が背景にあります。
しかしながら、タイの輸出による経済推進力は、予測を下回るものとなっています。輸出の回復が予想以上に遅れているのは、欧州や日本などの貿易相手国経済の低迷、電子産業での長期に及ぶ新規投資の不足を主因とした生産技術面の制約、自動車輸出の伸び悩み、天然ゴムなどの農産物価格の下落などが理由です。
世界経済を見ると、米国経済は顕著に回復しており、ほぼ予測通りの動きとなっています。しかしながら、日本経済は消費税引き上げの影響が予想以上に大きくなっています。また、欧州経済はファンダメンタルズの弱さのため、予測より減速しています。一方で、中国経済の回復には依然として不安定な動きが見られます。
観光業に関しては、予想以上に回復が遅れています。欧州経済の減速で欧州からの観光客の回復も遅れています。また、ロシアからの観光客は、同国経済に影響を及ぼす東ウクライナ紛争により、減少傾向になっています。
以上のタイ経済の現状により、カシコンリサーチセンターは、2014年通年のタイGDP伸び率の見通しを従来予測である前年比2.3%増から、新たな予測の同1.6%増に下方修正しました。

生分解性プラスチック工業の動向

自然・環境保護が世界的な流れになっており、現在、多くの国が国民に環境保護を意識させるためのキャンペーンや支援を実施しています。また、世界経済の発展は、大量生産およびその消費に支えられたものであり、大量の資源廃棄を前提とする社会を作り出してしまいました。世界銀行の報告によると、2025年に全世界で発生するゴミの量は、1日当たり600万トンに達し、2010年時点の350万トンから71.4%も増加します。こうした理由から、恒久的な環境保護と同時に環境問題を解決することができる新たなイノベーションを模索する必要性が高まっています。生分解性プラスチックは、その革新的製品の1つとなります。
生分解性プラスチックは、自然に分解することができるという性質を有するプラスチックです。トウモロコシ、キャッサバ、サトウキビなどの、循環栽培が可能で短期的に代替することができるバイオマスを原料として生産するか、もしくは石油から生産することも可能です。しかしながら、エネルギーや環境保護の風潮に加え、使うとなくなってしまう化石燃料である石油エネルギーへの依存を減らそうと努力が行われていることから、バイオマス由来で分解可能な生分解性プラスチックに注目が集まっています。

 

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世界で最も多く使われている生分解性プラスチックのペレットは、ポリ乳酸(PLA)であり、バイオマス由来で分解可能な生分解性プラスチック全体の45.1%を占めています。次いで、でんぶん樹脂(Biodegradable starch blend)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)がそれぞれ38.4%、8.1%を占めています。
現在、世界市場における生分解性プラスチックの需要は、年平均50%を超える勢いで増加しています。カシコンリサーチセンターは、今後4~5年間で世界の生分解性プラスチックの需要は著しく増加すると予想します。消費者の環境保護の認識が高まっていることや、各国政府が生分解性プラスチック利用を支援していることなどが主因です。
タイは、バイオマス由来で分解可能な生分解性プラスチックの生産拠点となる可能性があると考えられます。その主な理由は、その生産に適した原料であるキャッサバやサトウキビがタイで多く生産されているからです。これらの原料は、タイの国内需要を上回る数量を生産できる農産物です。キャッサバの加工はタピオカ・チップや、タピオカ・スターチなど付加価値がさほど高くない一次加工に過ぎず、すべての生産されたキャッサバの重量のうち70%以上を輸出しています。一方で、サトウキビは砂糖に加工されており、国内消費向けは僅か30%で、残りの70%が輸出されています。
カシコンリサーチセンターは、キャッサバ、もしくはサトウキビで生物学的に分解可能で、最も生産・利用されている生分解性プラスチックのペレットであるPLAの基礎母材を生産すれば、キャッサバ、サトウキビに価格面での付加価値をそれぞれ3.3%、4.0%増やすことができると試算しています。
生分解プラスチック工業への投資、中でも生分解性樹脂の生産工場建設や研究への投資には、多額の投資金額が必要です。従って、政府は投資面での税制優遇、低金利の貸付金支援、研究資金の支援、特質や生分解性プラスチックの分解検査のための実験室の建設、生分解プラスチック製品の基準の制定など、企業に対する明確な投資支援方針を打ち出す必要があります。現在、政府はタイ国内に3ヵ所の生分解性プラスチック製品検査実験室、つまり国立金属・マテリアル技術センター、タイ化学技術研究所、化学サービス局のラボを設けています。タイ生分解性プラスチック協会は、ラボの検査に合格した生分解性プラスチック製品に基準マークをつける予定にしています。

 

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■タイ経済最新情報 10月号
2014/10/30 (No.104)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン

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