カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2015年10月号

 内陸でのクラスター形態の特別経済区

タイ政府は、国家競争力を強化するため、国境県での特別経済区   (Special Economic Zone: SEZ)に加え、内陸でのクラスター形態のSEZの開発政策を打ち出しました。国境周辺のSEZは、近隣諸   国、特にCLM(カンボジア、ラオ ス、ミャンマー)との経済連携および、地方経済の活性化を目的として計画されています。とりわけ、近隣国の原料や労働力の利用を想定した労働集約型産業が集積されています。
一方で、クラスター形態のSEZは、タイの主要産業の競争力を強化し、生産性向上や輸出の競争力強化につなげる狙いです。とりわけ、研究開発事業、高度技術を使用する技術集約的産業の集積を目指しています。
クラスター形態のSEZは、3つのグループに分けられます。

(1)スーパークラスター:タイの重要産業の中でも、高度技術を必要とし、将来性も高い業種が「スーパークラスター」に位置づけられます。6分野を対象に税制、非税制上の優遇措置を付与して、全国の9県で開発が図られています。スーパークラスター対象の6分野は、自動車・同部品、電気・電子、環境保全型の石油化学・化学品、デジタル、食品の研究開発特区(Food Innopolis)、およびメディカル・ハブです。設置される9県は、対象の6分野の産業集積地である、北部チェンマイ、東北部ナコンラチャシマ、中部アユタヤ、バンコク北郊パトゥムタニ、東部プラチンブリ、チャチュンサオ、チョンブリ、ラヨン、および南部プーケットの各県です。

(2)その他クラスター:タイの競争力を強化する必要がある産業が「その他クラスター」に位置づけられます。農産加工と繊維・衣類が対象となっています。

(3)クラスター支援事業:クラスター開発に欠かせないナレッジ・ベース事業や、ロジスティック事業などがクラスター支援事業に位置づけられます。ナレッジ・ベース事業には、研究開発、工学設計、職業訓練などが挙げられます。一方で、ロジスティック事業では、商業空港、鉄道輸送、国際物流センターなどが挙げられます。

こうしたクラスター開発を成功させるためには、優遇特典、人材・技術開発、インフラ整備、障害となっている法規の解決、資金支援が必要となっています。現在、財務省とタイ投資委員会(BOI)が事業を行う企業への優遇策を検討しています。現時点で検討されている優遇策は以下の通りです。
・スーパークラスターについては、財務省が特に重要で将来性が認められると判断する事業に対し、10~15年の法人所得税免除特典の付与を検討しています。また、タイ人・外国人の両方でクラスター内で勤務する国際レベルの専門家の個人所得税も免除することに加え、外国人専門家の場合には、居住ビザの付与も検討されています。
・その他クラスターに関しても、外国人専門家の場合には、居住権の付与も検討されています。また、3~8年の法人所得税免除と、さらに5年間の50%控除の付与も同様に検討されています。
・クラスター支援事業については、ナレッジ・ベース事業は、8年間の金額制限なしでの法人所得税免除と、さらに5年間の50%控除を設ける方針です。一方で、ロジスティック事業は、3~8年の法人所得税免除と、さらに5年間の50%控除が検討されています。

kasikorn

■タイ経済最新情報 10月号 2015/10/30 (No.116)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン

arayz kasikorn

gototop