カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2014年9月号

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タイ経済・月間レポート(2014年8月号)

2014年6月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2014年6月の重要な経済指標によると、タイ経済は徐々に回復する兆しを示しました。輸出が過去2ヵ月連続のマイナス成長からプラス成長に転じました。しかし、国内支出が正常なレベルまで回復するには、さらにしばらくの時間が必要となりそうです。現在の政治状況は安定しています。

クーデターの後、タイ経済は徐々に回復

  • 2014年6月の一部のタイ経済部門は、回復の兆しが見えました。特に、タイの輸出は外国からの需要が改善したため、徐々に回復し始めました。また、政治的な安定が回復したことにより、民間投資は徐々に回復する傾向があります。しかしながら、国内支出は依然として完全な回復にはいたっていません。
  • 6月の一部の重要なタイ経済指標は依然として減少したものの、第2四半期のタイ経済成長率は前年同期比0.4%増加し、第1四半期の同0.5%減からややプラス成長になりました。一方で、下半期のタイ経済が徐々に回復傾向にある見通しです。その主要なエンジンとしては、民間消費・投資および輸出となる見通しです。輸出は比較ベースとなる前年同期の水準が低いことによる低ベース効果、およびコメ、タピオカや自動車などの輸出品の輸出が回復し始めることにより、増加する傾向があります。投資も、政治状況の安定化により企業信頼感が改善すると見込まれます。
  • しかしながら、現在、タイの輸出と観光業の回復テンポは依然として不安定な状態になっていることから、今後のタイ経済回復に未だ下押し圧力がかかっていると考えられます。

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6月の民間支出に関して、民間消費は5月の前年同月比0.1%減から同1.1%減となり、減少を続けました。民間投資も5月の同3.0%減から同2.7%減となりました。全体的な国内民間支出が減少したにもかかわらず、政治状況が安定しているため、民間の一部の消費財購入は改善しています。また、民間投資の回復も見え始めました。
特に、資本財の輸入およびセメントの販売量は増加しました。
6月のタイ経済回復の兆しは依然として明らかにならないものの、投資家の将来の経済信頼感は改善する傾向があります。それは今後の工業生産、投資、国内消費の回復にプラス影響になる可能性があります。6月の企業信頼感は5月の48.6から48.0に減少したものの、3ヵ月先の企業信頼感指数は5月の53.1から6月の54.0に上昇しました。また、6月のタイ産業信頼感指数も5月の85.1から88.4に上昇しました。
6月の輸出は、5月の前年同月比1.2%減から3.8%増に転じ、過去2ヵ月連続のマイナス成長からプラス成長に転じました。その主な理由は、米国およびユーロ圏の景気回復のためです。それにより、全体的な工業製品の輸出がプラス成長に転じました。特に、機械・部品および石油化学製品はすべての市場で大きく成長しました。しかしながら、自動車・部品、電子製品や電気製品などの工業製品の輸出は、完全には回復していないアジア市場への依存度が依然として大きいものとなりました。一方、6月の農産物、特にコメの輸出は、競合国より低価格であったことのプラス影響で、輸出量が大幅に増加し、成長しました。しかし、全体的な農産加工品の輸出は、砂糖の供給過多およびエビ不足の問題により、依然として減少しました。

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商務省が発表した2014年7月の貿易統計によると、タイの輸出額(188億9600万米ドル)は前年同月と比べ、6月の3.9%増から0.85%減に転じ、アナリストが以前に予想したプラス成長からマイナス成長に転じました。2014年残り期間の輸出回復に不安定性の兆しが見られました。7月の大幅に減少した輸出品は、石油(23.2%減)と金(71.7%減)です。また、ゴム・製品、電子回路や鉄鋼・製品などの他の主な輸出品も引続き減少しました。しかし、自動車・部品、コンピュータ・部品や化学製品などの様々な主要工業製品およびコメや冷凍鶏肉・鶏肉加工品などの農産物・加工品の輸出額は引続き増加しました。
しかしながら、石油と金の輸出額を除いた場合、7月の輸出額は前年同月と比べ、6月の3.5%増から2.5%増となり、過去2ヵ月連続のプラス成長を示しました。引続き成長していたタイの主要な輸出先は、米国、ユーロ圏やCLMV諸国などです。
工業生産に関しては、5月の前年同月比4.1%減から同6.6%減となりました。自動車生産は比較ベースとなる前年同月の水準が高いことによる高ベース効果および自動車の国内販売が引続き低調だったことにより、減少しました。また、ハードディスク駆動装置(HDD)の生産も、海外からの需要の低調により減少しました。さらに、電気製品、特にエアコンの生産も、在庫水準が高いこと、およびアジア市場の需要減少および中東情勢への不安により悪影響を受けました。
商務省が発表した2014年7月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比2.16%増となり、6月の同2.35%増を引続き下回り、過去4ヵ月ぶりの最低水準になりました。前月と比べた場合、7月のヘッドライン・インフレ率は、0.1%減となり、2ヵ月連続のマイナス成長を示しました。その主な理由は、ウクライナとロシアの対立および中東情勢への不安は高まったものの、石油供給には影響がなかったことにより、世界的な石油価格に圧力をかける要因がなかったためです。また、一部の石油燃料や調理用液化石油ガス(LPG)などの燃料価格統制で、小売価格の上昇が抑制されていたことも要因となりました。
一方、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月に比べ1.81%増となり、前月の同1.71%増を上回りました。
バーツ相場の変動については、タイバーツは、2014年7月末には1ドル=32.08バーツの終値をつけ、6月末の終値1ドル=32.43バーツから引続き上昇しました。米連邦準備制度理事会(FRB)がフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を依然としてゼロ近辺に据え置く計画を維持すること、およびタイ経済が徐々に回復している兆しを示したことにより、タイの金融市場と株式市場に資金が流入したため、タイバーツが引続き上昇しました。
第2四半期のタイ経済見通しに関して、6月の一部の主要タイ経済指標は依然として減少したものの、第2四半期のタイ経済成長率は前年同期比0.4%増加しており、第1四半期の同0.5%減からややプラス成長になりました。

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