中野陽介コラム

世界の路上ワーカー 路上に溢れる可能性

2 バス内まで行き届くお菓子屋 (メキシコ/メリダ)

バスに乗ると、最後に乗った女性が突然叫び始めた。乗客は驚く素振りを見せることもなく、彼女の両手のお菓子を見た。バスの運転手も彼女を注意する素振りはない。

1人の男性が手を挙げてお菓子を買った。確かにこれなら、バスの中で小腹が空いた乗客の欲求を叶えることが出来るし、商品を見せることで、食欲をソソらせることもできる。これから長時間バスに乗る人にとっては、嬉しいサービスだ。

バスが出発する直前になって、彼女はスルッとバスを降りていった。
なるほど、手持ち可動経済には、身体と法が許す限り、どの空間にもすり抜けて入って行くことができるため、リミットがない。
彼女は、バスの中まで経済空間に変えてしまっていた。


中野陽介 芸術家。1987年福岡生まれ。07年渡米、Los Angeles City College卒業。数々の映画制作に参加後、芸術に目覚める。12年 渡タイ、バンコクで芸術家とサラリーマンの2足のわらじ生活を送る。16年に1年間で22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。自作の「芸術入門サイト」(art-geijutsu.com)は10万アクセス突破。作品や活動記録は下記サイト参照。
yosukenakano.com

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