Book Review 社長が紹介する、一冊　a2network Thailand Co., Ltd. 伊藤大己

『七つの会議』　池井戸 潤著 日本経済新聞出版社 656B

勧善懲悪と共存する人間ドラマ サラリーマンのためのエンターテインメント小説

『オレたちバブル入行組』『下町ロケット』など、数々のヒット作を生み出し続ける池井戸潤のクライム・ノベル。とある中堅メーカーで起きたパワハラ訴訟をきっかけに繰り広げられる人間模様には、不祥事を隠蔽しようとする人、暴こうとする人、それぞれの思惑が行き交い複雑に絡み合う。日本のサラリーマンであれば誰しも経験したことのある、日常的な組織の矛盾や現場の葛藤、緊張感までもがリアルに描かれた一冊だ。
池井戸作品は読破しているという伊藤社長は、「企業間や組織内のしがらみや隠蔽体質といった、日本の昔ながらの理不尽な企業体質に対抗して、正しい主張をする爽快さに惹か れる」と話す。
「考えや決断に迷った時はビジネス書も読みますが、本は移動中や眠る前に読むことが多 いので、リラックスして読書に集中できるよう、敢えて現実的なベンチャー系やスタートアップ系は避けています。池井戸作品に出てくる登場人物に共感すると言うよりは、不祥事や悪い人間の話を、自社の反面教師にしているところがあるんです。せっかく海外をベースに事業展開していますので、日本の悪習慣には捕われたくない。ずっと同じビジネスモデルで生き残れる会社はありませんから、現場の意見を殺すのではなく生かせる、スタッフ全員が真っ当な仕事をして、正しい主張を通して、イキイキ仕事ができる、そんな風通しの良い組織を目指しています」。