【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

インドネシアの自動車市場の概況とxEV政策動向(前編)

インドネシアの自動車市場の概況とxEV政策動向(前編)

アセアンでタイに次ぐ生産規模を誇るインドネシアは、2020年までに生産200万台、輸出を現在の20万台から2~3倍に拡大という計画を発表し、現在のタイの生産台数に並ぶ目標を掲げた。

併せて、xEVの生産・販売の目標を生産の20%、つまり約40万台に定め、アセアンでxEVの生産拠点になることを目指す。背景にあるのは、タイに対抗して、域内最大の国内市場規模を活かしながら生産ハブの地位を獲得しようという狙いである。本稿では、インドネシアの自動車市場の概要、生産ハブ化の展望、xEV政策の現状と展望について触れる。

自動車市場動向

インドネシアの自動車生産は伝統的に国内市場向けが中心であり、完成車輸入が抑えられていたことから、国内市場の変動にほぼ連動して推移してきた。インドネシアの自動車市場は、1997年の通貨危機とスハルト政権崩壊後激減したが、2008年以降、ユドヨノ政権下で政治経済が安定するなか、国内販売は高い成長率を実現、2011年には90万台に達し、域内最大の市場になった。

2014年には、国内市場の拡大に加え、輸出が初めて20万台を超えたことから、生産は過去最高の130万台に到達した。2015年以降は、ルピア為替下落の影響、金利の引き上げ、国内消費の冷え込みを背景に、生産・販売ともに100~120万台で推移しており、伸び悩んでいる。

インドネシアの2010~2015年の市場拡大を支えたのはローコスト・グリーン・カー政策(LCGC)である。当政策は、タイのエコカー政策を意識して2013年に策定された1.2リッター以下の小型車の生産優遇策である。この政策の目玉は80%の国産化を条件とした奢侈税の免税であり、トヨタ、ダイハツ、ホンダ、日産、スズキの日系5社から30億ドルの投資を呼び込むことに成功した。

LCGCの価格が95百万ルピア(約95万円)に抑えられたこともあり、これまで中古車などを購入していた中間所得層や若年層を中心に普及し、2016年には過去最高の20万台に達した。しかし、2017年以降は、経済成長の鈍化や家計負債の増大を背景に、中間所得層の購買力が低迷し、LCGC市場は伸び悩んでいる。

(ArayZ7月号に続く)

執筆者:野村総合研究所タイ


マネージング・ダイレクター
岡崎啓一


シニアコンサルタント
山本 肇

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