【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

マレーシアの自動車市場の概況とxEV政策動向(後編)

マレーシアの自動車市場の概況とxEV政策動向(後編)

(前回の続き)

ブランド別の構成をみると、アセアンの貿易自由化以降、ホンダ等の日系メーカーの現地ノックダウン車の比率が上がり、なかでも、ホンダのシェアは2010年の7%から2017年に19%へと急増している。ホンダは若者の間で人気があり、ブランド力があったが、現地生産拡大により優遇税制が適用され、価格競争力が上がったことが、シェア増大に結びついた。このほかに、小型車に強いダイハツ傘下のPERODUAは、低燃費志向や小型志向を反映し、シェアを引き上げている。

この結果、国民車の代表格であるプロトンのシェアは同じ時期に26%から12%に落ち込み、経営危機に追い込まれ、昨年5月に、中国の吉利汽車の49%出資を受け入れたことで吉利汽車の傘下に事実上入った。

セグメント別では、過去の国民車政策により乗用車が優遇されてきたことから、乗用車のシェアが全体の65%を占め、アセアンでは最大の市場になっている。近年では、若者を中心に斬新なデザインやレジャー志向を反映し、SUVの人気が高まっており、市場の多様化が進んでいる。

吉利汽車のプロトン買収とマレーシアの生産拠点化

今後のマレーシアの自動車産業の動向で注目されるのは、吉利汽車の傘下に入ったプロトンの動向である。特に、吉利汽車がどのようにシェア低下の著しいプロトンを再建し、マレーシアを生産拠点化していくかという点である。

プロトンは従来国民車としての責務として、多くの部品をブミプトラ(マレー系優遇措置)政策の下で競争力のないブミプトラ系のサプライヤーから購入しており、品質及びコストの競争力の低下の一因となった。吉利汽車の傘下になったことから、過去のしがらみから開放され、中国から安い部品を購入し、マレーシアで組立て、地域向けに廉価な車を供給することが可能になる。

現に、吉利汽車は2018年10月からプロトンバッジでSUV(モデル名X70)の生産を開始しており、将来的にはラインアップを拡大する計画だ。また、吉利汽車は中国で電気自動車(プラグインハイブリッドも含む)を3~4万台生産しており、今後のx-EV政策次第ではマレーシアにもってくる可能性がある。x-EV政策の推進側に立つ可能性もあり、今後目が離せない。

(ArayZ 12月号に続く)

執筆者:野村総合研究所タイ


マネージング・ダイレクター
岡崎啓一


シニアコンサルタント
山本 肇

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