国内販売の低迷、輸出拡大にも課題
8月の自動車販売は前月比48%増の37,277台と3ヵ月連続で回復している。ただし、対前年比で見ると1月~8月の累計で51%減、8月単月で59%減と、30%減まで戻っているタイに比べて落ち込みは大きい。
ロックダウンによる経済活動の低迷、消費者の購買力の低下に加えて、自動車ローンの引き締めが行われた。政府は経済対策の一環として、9月まで自動車ローンの返済猶予措置を講じたが、返済不払いが急増して頭金比率の引き上げなどローン条件が厳しくなった。同国では、購入者の8割以上がローンを利用しているため販売への影響が大きい。
自動車生産は5月以降回復している。生産を下支えしたのは輸出である。5月に販売が前年比95%減に落ち込んだ際も、輸出は同76.6%減、6月以降は約50%減で推移している。ただし、8月の輸出は中近東市場の減速もあり前月より減少し、回復に陰りが見えてきている。
インドネシアは近年、タイからの生産移転を受け、輸出が拡大傾向にある。インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)の統計では2015年の21万台から昨年は33万台に到達した。
ただし、輸出の内訳はタイと二つの面で異なる。第一に、地域別の仕向け先構成ではアジア向けが65%を占め、最大の輸出先のフィリピンが6万台を超えるなど、インドネシアは特定の国への依存度が高い。アジア、オセアニア、中近東などに相当数輸出しているタイと比べると、輸出市場の多様化が進展していない。
第二にインドネシアの車種構成では乗用車が97%以上を占め、その大半は7人乗り3列シートのミニバンや小型MPV(多目的車)、小型SUV(スポーツ多目的車)となっており、豪州など主要輸出市場の嗜好に合う車種が少ない。一方、タイはピックアップを中心とする商用車や小型乗用車、SUVなど多様な車種の輸出拠点化に成功している。
政府が図る輸出拡大への協力
GAIKINDOの見通しでは、今年の自動車生産は前年比50%減の50万台まで落ち込む。現在、生産能力は200万台以上に達し、余剰生産能力の問題がメーカーに重くのしかかる。
国内市場の回復が遅れる中で、政府は貿易収支の改善も見込める輸出拡大への協力を自動車メーカーに対して一層強めると予想される。特に19年3月に豪州と包括的経済連携協定(EPA)を締結しており、メーカーに豪州向けの輸出拠点化を強く求めると見られる。
しかし、日系メーカーは豪州市場に合う車種がないために、インドネシアが得意とする小型MPV/SUVや排気量1.2リッター以下の小型乗用車を周辺国や中東、中南米などの新興国向けへ拡大することで協力すると見られる。
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