【連載第2回】千代田中央法律事務所 タイの労働法制 従業員10名以上になった場合の使用者の義務

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タイに進出、事業を拡大していき従業員が10名以上になると、就業規則の作成義務が発生する。就業規則作成義務以外にも従業員数が10名以上になった場合には、労働法制上さまざまな義務が発生する。本稿では、そのようなタイ労働法制上の義務について取り上げることにする。

就業規則について

就業規則の作成義務

就業規則の作成義務については前稿で詳細に取り上げたので、概略をふれるにとどめることにする。
従業員が10名以上になった場合、その日から15日以内にタイ語で就業規則を作成し、従業員が認知できるように掲示する必要がある。加えて、就業規則を作成し掲示した日から7日以内に、労働局に届出て、その内容の適法性についてチェックを受け、必要に応じて法に適合するように修正する必要がある。修正後は、再度労働局に届出をしなければならない。
就業規則に必ず記載しなければならない事項として、8項目が労働者保護法に明記されている。なお、一度、就業規則作成義務が発生すると、仮に労働者数が10名を下回った場合でも、引続き就業規則を用意しておく義務がある。

<参考>~雇用条件協約について~

使用者と労働者の間の労働条件に関するものとして、就業規則のほかに雇用条件協約がある。雇用条件協約は、労働者が20名以上になった場合に、労使が合意し文書として作成する必要があるものであり、雇用・労働条件や労働日、賃金などの事項を規定しなければならない。しかし、締結しなかったとしても罰則はなく、労働条件協約が無かった場合には、就業規則がその代わりとなる。
雇用条件協約を締結した場合には、就業規則でも同様だが、協約より労働者に不利な労働条件での労働契約は効力を有しなく、協約の保護レベルに準じることになる。一方で、協約よりも労働者に有利な条件での労働契約は問題なく有効となる。

労働者登録簿の作成

使用者は、労働者が10名以上になった日から、労働者登録簿をタイ語で作成し、労働監督官が検査できるように事業所に備置しておかなければならない。
労働者が就業した場合には、就業開始後15日以内に、その者の情報を記載した労働者登録簿を作成する必要がある(表①)。また、労働者に関する情報を変更する必要がある場合には、労働者から変更の通知があった後15日以内に労働者名簿を改定する必要がある。労働者が退職した場合は、退職した日から2年間以上、労働者登録簿を保存する必要がある。

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賃金台帳の作成義務

使用者は、労働者が10名以上になった日から、賃金および残業代(時間外手当、休日手当、休日時間外手当)に関する事項を記載した賃金台帳を作成する必要がある(表②)。そして、使用者が労働者に対し、賃金および残業代を支払ったときは、賃金台帳に署名させる必要がある。賃金台帳は1冊にまとめても複数冊に分かれても問題ない。労働者が退職した場合は、退職した日から2年間以上、当該労働者の賃金台帳を保存する必要がある。

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雇用状況、労働状況の報告

10名以上の労働者を使用する使用者は、毎年1月中に労働局に対して、雇用・労働状況を記載した報告書を提出する必要がある。報告書を提出したのちに、雇用・労働状況に変更があった場合には、変更があった月の次月中に報告をする必要がある。

 

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佐藤聖喜 代表弁護士
千代田中央法律事務所・バンコクオフィス
1 Empire Tower, 23th fl., River Wing West,
South Sathorn Rd, Yannawa,
Sathorn, Bangkok 10120
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