もう悩まない!人材採用&育成のコツを解説 Vol. 3 タイ人事相談室|en world

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タイで日系企業への人材紹介に携わり7年の経験を持つ下川ゆう氏が、人材採用や育成にお悩みの読者様へコツを解説する本コラム。
日本人との相違点から『タイ人材の特徴』に迫るテーマの最後となる今回は、「他社との関係」から、タイ人材が転職を繰り返す理由を読み解きます。

タイ人材の特徴を知ることでつかめる面接のコツ③

タイ人は優しい?冷たい?

タイ人と日本人は似ているのでしょうか?「自己との関係」(7月号掲載)、「家族との関係」(9月号掲載)に続き、最後に「他者との関係」という視点で、タイ人と日本人の相違点からタイ人材の特徴について考えたいと思います。
タイで暮らしていると、タイ人の優しさに触れる場面がたくさんあります。数年前、BT
S内で貧血を起こし倒れてしまった時のこと。目が覚めた時には車内に横たわり、タイ人の乗客に囲まれていました。ある人は私の足を上げるために自身のバッグを足の下にひいてくれ、ある人は頭に手を当て頬に手を当ててくれ、暑いだろうと仰いでくれ、手を握ってくれていた人もいました。
タイ人は、困った人がいる場面に居合わせると、それが他人であっても親切な優しさを見せる一方で、仕事に関しては(日本人からすると)淡白でクールな一面を見せます。

組織への帰属意識よりも個人として得られる満足

日系企業のお客様から、「タイ人はなぜ頻繁に転職するのか(転職回数が多いのか)?愛社精神はないのか?」という質問をいただくことがあります。
タイ人にとって転職とは、〝自分自身の生活をより豊かにするための行動(次はもっとベターになると思っての行動)〞であり、「転職をすることで他者からどう思われるか気になる」、「転職にあたり現職の会社に対して後ろめたい」などの感覚を持つことはあまりないようです。それよりも彼らは、「給与や福利厚生を含め、よりよい条件で楽しく充実した仕事にチャレンジしたい」と考えています。
また、会社そのものに対してよりも上司との関係を重視する傾向にあり、好きな上司の転
職先の会社に誘われた場合、一緒に転職していくケースも珍しくありません。周りに迷惑をかけるような酷い辞め方をしない限りは、元同僚達も他人の転職について気にしたりはしないようです。
弊社では求職者の方が転職の相談に訪れる際、親や恋人を同伴してくることもあり、公私
の境はかなり曖昧な印象です。

遠慮で家族は守れない

一概には言えませんが、このような行動の裏にあるのは、タイの社会保障制度が日本ほど手厚いものではなく(むしろ薄く)、福利厚生面でのサポートを会社に求める割合が大きいという事情ではないかと思っています。日本の国民皆保険や国民年金のような制度がない分、「国に守られている」感覚が薄いタイ人は個人主義です。自己と家族の生活を守るため、会社への帰属意識よりも仕事から得られる報酬や福利厚生、仕事から得られるスキルや経験に対する期待値が高く、その点が転職に求めるものでもあります。
他者に遠慮しても自己と家族は守れませんから、転職でよりよい条件の仕事を勝ち取ろうと活動を続けるのは当然のことなのでしょう。
タイ人材と良好な関係をキープするためにも、日本人以上に福利厚生面を重視している可能性が高いこと、会社という組織よりも自身含め、身近な上司など個人に重きを置く傾向が強いことを心得ておくことがヒントになれば幸いです。

 

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下川 ゆう yu shimokawa
en world Recruitment (Thailand) Co., Ltd.
日系チーム チーム・マネージャー
立教大学卒業。大手人材紹介会社の東京本社で経験後、2009年に来タイ。
以来、在タイ日系企業への人材紹介に従事。顧客企業の組織発展のための
採用支援を得意とし尽力している。

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