ArayZオリジナル特集

事業の国際化を推進させるグローバル企業の人材戦略

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日系企業の人事と課題

海外進出先での外国人採用実施状況(図表4)を見ると7割以上の日系企業が外国人の採用を行っており、また5割以上の企業が〝今後数年間は日本人社員が海外拠点のトップだが、幹部層に外国人社員を抜擢することを計画している〟(図表5)と回答している。しかし、現地採用社員の本社管理職へのキャリアパスを設定していたり、世界共通の人事評価基準を設ける日系企業は少ないのが現状だ(図表6、7)。優秀な現地人材を採用するには、日本本社も巻き込んだ人事面での対応改善が求められる。

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「特にシンガポールで優秀な人材を獲得するには、明確なキャリアパスの提示や公平な報酬体制を示すことが非常に重要ですが、決して欧米化しなくてはいけないということではありませんし、欧米といっても国によって傾向はそれぞれ異なります。日系企業は自社の〝強み〟と〝弱み〟、そして現状の洗い出しを行い、どのような組織を作りたいのかを本社と現地との擦り合せることで、見えてくる方向性があると思います」(西野)。

「売り手市場の国や地域では、企業側は選考という形で人材を見極めますが、人材側も選考を通して企業の良し悪しを判断しているという事を忘れてはいけません。面接の際、タイへ進出した経緯やタイ現地法人のビジョンなど、〝会社の説明〟〝任せたい仕事〟〝今後どうしていくのか〟などが語れないと、求職者に『この会社に入りたい』と思われるのは難しいようです。たとえ入社してもらえても『思っていた仕事と違った』と退社されてしまう〝ミスマッチング〟が起きてしまいます。大手、中小問わず、企業側はどのチームでどのような仕事を任せたいのかというはっきりしたビジョンを明確に示し、求職者に『自分のやりたい仕事がこの会社にある』と思われるよう、予め面接をする前に準備をしておくことをお勧めしています。先ほど権限委譲の話がありましたが、一部の日系企業では本社が方針をすべて決めて、それに現地法人は従うという形を取り、日本の本社がタイ現地法人のキャッシュフローを見ているようですが、これではスピード感が得られません。スピードが重視されるグローバルの舞台では日本の本社にお伺いをしている間に他企業はどんどん先に進んでいきます」(下川)。

グローバル企業の採用基準

では、グローバル化に成功している企業ではどのような採方法が取られているのだろうか。西野氏は採用を行う際、人材を〝カントリー人材〟〝リージョナル人材〟〝グローバル人材〟の3層に分類できるという。

「『カントリー人材』とは特定の国の市場内で事業展開を行う人材です。日本の場合は一般にどの製品・サービスにおいても市場規模が大きく、かつ市場の成長が続いてきたため、カントリー人材として働く人が多いと思います。日本にいても海外営業を行う人は『リージョナル人材』になり、各国の部門から報告を受けリージョナルレベル(北米、欧州、APACなど)で最適化に取り組む人材で、エリア内における営業活動、事業活動を遂行します。購買を例にいうと、ある企業が別々のサプライヤーから同じ部品を異なった金額で購入していた場合、一括購入を検討し、リージョン内において納期に支障をきたすことなく、より安く部材を仕入れることを追求することとなります。さらに『グローバル人材』とは、各リージョナル部門から報告を受け、グローバルな視点で各国・各地域(欧州、アメリカ、アジアなど)のビジネスを鑑みながら、ワールドワイドで意思決定を行う人材です。この層の人材はグローバルレベルでビジネス最適化を達成しながら、各国・各地域において競争力が得ることが職責となります。このようなグローバル人材は企業の本社に存在することが多く、シンガポールや香港のような市場規模では国内だけで市場が成り立つことがほぼないので、APAC全体もしくは東南アジア全体を担当すること場合がほとんどです。今後、自国市場の成長が踊り場にきた日本経済においても、日本を含む複数の国を管理するリージョナル人材の需要が高まるかもしれません」(西野)。

これら3分類される人材は上下関係で定義されるものではなく、あくまでも役割の違いであると認識しておいたほうがよい。両者における違いは経験値に基づいて、どの程度各国の商習慣の違いを理解しているかによる。例えば、タイやシンガポールにおいては、マレーシアやインドネシアといったアセアンの国々の商習慣を理解していれば良いということになる。しかし、グローバルで活躍するには世界各国のある程度の商習慣知識とビジネス経験も持ち合わせることが必要とされる。

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