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オフィスの在り方“新常識” これからは3Sが当たり前〜スリム&サステナブル&サテライト〜

新型コロナウイルス感染拡大防止対策として大半の企業で導入されたリモートワークも、タイ国内感染者数を抑えられている昨今では、導入した大半の企業が従来の通勤するスタイルに戻した。

また、街中や企業内で、検温や消毒等の感染リスク軽減施策がニューノーマルとして定着したことで、感染第二波が先々来た際の一定の順応力は備えることができた。

一方で先行き不透明な経済状況下、多くの企業が売上や新規引き合い数の減少といった厳しい局面を迎えている。いかに効率よく、いかにコストを抑えてこのコロナ経済ショックを乗り越えられるかが今後の重要な経営テーマになる。

先行き不透明なタイ経済

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新型コロナウイルスにまつわる規制緩和後、タイ国内の経済活動が再開したことで内需は底を打ちつつある。しかし輸出依存度が高い外需をベースにしたタイの経済構成上、世界経済全体の後退と、入国制限措置が全面解禁するまでの観光業低迷を鑑みると、依然としてタイ経済全体の見通しを明るいと判断する材料は乏しい。

この状況がいつまで続くのかを、現時点で確度高く想定することは難しく、企業で短中期に掛かる固定費をいかに削減し、現状に耐えながら先に備えられるかが鍵となる。

スリムなオフィス環境へのシフト

コロナ禍に半ば強引に導入されたリモートワークではあるが、導入することで「場所」「物」「人」「時間」のそれぞれのカテゴリーにおいて何が本当に必要で、何が不要かが明確になった企業も多いのではないだろうか。実際に、既存オフィスの契約更新を1年以内に控える企業から、一部従業員のリモートワーク促進に伴うオフィスの余ったスペースのスリム化、つまりは縮小移転の問い合わせが弊社空間デザイン部門で増えている。

リモートワークは高度な連携が必要なチームワークには不向きであったり、従業員の教育やモチベーション維持、イノベーションが起きにくい等の課題もあるため、オフィスを完全に無くす企業が増加することは考えにくい。

今後のオフィスの在り方としては、総務や会計スタッフ等の常駐メンバー用固定デスクスペース、会議室、リモートワークの従業員が打ち合わせ等で出社時に使用できるフリーアドレスデスクのみのスリムな環境を維持し、それによる賃料コスト削減を図ることがバランスの良い選択と言える。

不動産トレンドから見るスリム化の重要性

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2020年3月末時点でのバンコク市内オフィス面積は886万㎡になり、賃貸率は95・3%と依然に高水準を維持している。賃料相場も引き続き上昇傾向には変わりがないが、25年までにさらに145万㎡増床するため、この5年間で徐々に需要と供給のバランスが正常化する見通しである。その結果、BTSやMRTの各駅からアクセスが悪い物件や、経年劣化が目立つ物件の賃料は、緩やかな上昇か現状据え置きに留まる可能性が高い。

一方で多くの日系企業が好む、アクセスが良く、竣工から年数がさほど経過していない物件賃料は今後も一定の上昇を続けることが想定できる。

そのため、仮にコロナ経済ショックが起こっていなかったとしても、バンコクのオフィス不動産トレンドを鑑みると、賃料コストが上昇していく課題に向き合う必要は潜在的にあった。検討を棚上げしていた企業もこの機に重い腰を上げることになり、今後その動向に拍車がかかっていく。

コロナに後押しされる働き方の多様化

生産年齢人口と労働力人口の減少が深刻な日本では、労働力や成長力を維持していく上で、多様化した労働者のライフスタイルや価値観、ニーズに順応した働き方が求められ始めている。この風潮はコロナ以前からあったが、コロナを機に多くの労働者がリモートワークを体験したことで、今後さらに強まることは必至である。

日本同様に生産年齢人口の減少フェーズに突入したタイでも、労働者のライフスタイルや価値観、ニーズの変化が徐々に加速することになり、遅かれ早かれその変化に社会や企業は順応を求められる。今後のコロナの影響有無に関係はなく、時代の先を見てリモートワーク環境整備に早めに力を入れる企業が増えていくであろう。

サステナブルなリモート環境

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コロナ禍に大半の企業で急遽実施されたリモートワークは、準備の時間が皆無に等しく、走りながらやり方を模索することを余儀なくされた。しかし、時代の先を見てリモートワーク環境整備を進めていく今後は、コロナ禍の急場しのぎではなく、従来の通勤するスタイルと同様のパフォーマンスを効率良く継続できる環境作りが必要になる。

社内外の関係者との密接なコミュニケーション方法、従業員の教育やモチベーション維持、雑談ベースに起こるイノベーション機会創出、ペーパー作業プロセス、セキュリティー強化や機密情報の社外での取り扱いルール、VDI(仮想デスクトップ)やクラウド環境整備等、クリアするべき課題は多岐にわたる。時代の先を見てリモートワーク環境整備を早めに進めブラッシュアップを続けた企業と、後手に回った企業では大きな実力差が出てくる。

オフィススペースのサテライト化

従業員数が多い企業では、サステナブルなリモートワーク環境がある程度実現した後、さらなる生産性の向上やワークライフバランスを高めていく過程にて、オフィススペースのサテライト化が加速していく。

サテライトオフィスは、企業本拠地から離れた場所にある小規模な働く場所になり、主に都市型、郊外型、地方型の3タイプに分かれる。その企業の業種や属性、従業員数、顧客エリアや目的等によって採用するタイプは異なり、また、自社でタウンハウスの様な住居物件を賃貸するケースや、シェアオフィスを活用するケース等パターンは多岐にわたる。

サテライトオフィスの詳細や、使用頻度が著しく低い大量の紙ベース書類を郊外のレンタル倉庫へ移動させる、書類スペースのサテライト化等も併せて説明差し上げたいが、当記事のページスペースの都合もあり、次回の記事にて改めてまとめさせていただきたい。

コストシミュレーションの進め方

オフィスのスリム化を検討するにあたって先ず重要になることは、移転先オフィス賃料等の不動産的観点と、既存オフィスの原状回復費や新設オフィスの内装費、必要な広さ等の内装的観点を併せたコストシミュレーションである。

コストを下げる上で、既存オフィスの残存契約期間は少ないに越したことはないが、オフィススペースの縮小具合が大きい場合は残存契約期間分が若干長く、その賃料を違約金として支払った場合でも短中期的にコストを削減できると判断できる場合もある。

図表は、既存300㎡のオフィスを100㎡に縮小させた場合のシミュレーション概要になる。既存オフィスの契約完了のタイミングと同じタイミングで移転ができた場合は、移転1.5年経過時点で追加投資額は家賃削減額と相殺でき、以降は年間264万THBの削減になる。既存オフィスの契約残存期間が若干残っており、例えば残存3ヵ月分を違約金として支払ったとしても移転1.8年時点で追加投資額は相殺になる。

上記数値はあくまで例になり、賃料、広さ、契約条件、内装内容により異なる。弊社までお問い合わせいただければ、概要をヒアリングの上具体的なシミュレーションと条件に沿った移転先物件のご紹介も併行してサポート可能である。

GDMは100社以上の取引実績あり

[ オフィス内装/オフィス家具 取引企業様一例]

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寄稿者プロフィール
  • 山本 征史 プロフィール写真
  • GDM (Thailand) Co., Ltd.
    山本 征史

    慶應義塾大学 法学部法律学科卒業。2015年来タイ。オフィス内装や工場設備内装等の職場空間デザインに強みを持つ。タイ国内において多数の案件実績を持ち、日系企業を働く環境造りからサポート。

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  • 電話 : 088-572-4998(山本)

    Eメール : seiji@gdm-asia.com

    57, Park Ventures Ecoplex, 12th Fl. Unit 1211 Wireless Road, Lumpini, Patumwan, Bangkok 10330

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