日刊工業新聞

大和ケミカル―タイ・ベトナムで高品質に

車用ゴム製品など市場深耕/幅広い材料の現地調達推進

大和ケミカル(神奈川県厚木市、中村英寛社長)は、自動車分野に強みを持つゴム製品メーカー。日本のほか、タイに二つ、ベトナムに一つの3工場を構え、各工場で調達・販売の現地化を進めている。特にタイの第2工場はゴム材料以外の製品も調達できるよう現地免許を取得。外部調達の金属部品とゴム製品を組み合わせて販売し、売り上げを伸ばしている。

大和ケミカルは1999年にタイに進出した。生産コストの低減と、メーン顧客である自動車部品メーカーのASEAN(東南アジア諸国連合)シフト対応、現地の経済成長の取り込みが狙いだった。現在は第2工場を設け、第1工場は日本への輸出拠点として自動車部品用ゴム製品などを製造する。第2工場は自動車部品向けのうち外観品質レベルが高い重要保安部品や医療用部品を製造し、ローカル企業向けも含め販売している。両工場とも材料の現地調達が進み、現地調達率は約7割にのぼる。

日本の工場に次ぐ規模に成長しているのが、タイの第2工場だ。2013年には「国際調達事務所」認可を取得し、ゴム材料だけでなく金属部品も調達可能になった。中村社長は「中小企業は、急ピッチで設備投資を行うのが財務的に厳しい。外部調達品とゴム製品を組み合わせて販売することで売り上げ拡大につなげている」と語る。

13年4月に始まった日銀の大規模金融緩和は、大和ケミカルの海外生産に大きな影響を与えた。円バーツの為替が、1バーツ=2円50銭から3円50銭まで円安が進行。現地の売り上げはバーツ建てのため、日本向けの輸出の採算が急激に悪化した。コスト低減と為替リスクの分散を目指し、ベトナムに工場を建設した。

タイと違い、ベトナムは産業が未成熟でゴム関連市場も立ち上がっていない。そのため、ゴムの材料を加工する練りメーカーも存在せず、同社も原料はタイと日本から送っている。ただ、17年には海外の練りメーカーが現地に進出を発表した。今後は同社のレシピを練りメーカーに提供し、ベトナムでも材料調達を始める方針だ。

ベトナムには、ゴム製品の後加工を行う協力企業も存在しない。そこで同社は、日本に来ていたベトナム人の起業をバックアップし、4月に協力メーカーの設立につなげた。現在は後工程のバリ取り加工などを発注している。中村社長は「自社のみで業務量を増やしていくと、ストライキなどが起こった際に対応できなくなる。外部企業と仕事を分担することは、海外でビジネスを進める上で重要なリスクヘッジ」と語る。

幅広い材料を現地調達している同社だが、どうしても調達できないのが金型だ。中村社長は「月に何百万個も生産する量産品をつくる上で、金型の質は非常に重要。日本製以外は使えない」とキッパリ。日本製の金型を使い、海外でも高品質なモノづくりを追求している。

※記事提供・日刊工業新聞(鳥羽田 継之 2018/6/6)


▲タイの第2工場。「国際調達事務所」認可を取得し、金属部品の調達も行っている

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