日刊工業新聞

小松ばね工業―インドネシアで車に照準

精密バネ ニーズ的確に把握/高い技術力 幅広い産業から信頼得る

小松ばね工業(東京都大田区、小松万希子社長)は、バネの受託製造を手がける。日本とインドネシアに工場をもち、各種スイッチや医療機器などで使われる精密バネを製造している。近年、インドネシアでは自動車向けのバネをつくり始めた。現地のニーズに応じて生産体制を整えていく。

小松ばね工業は、顕微鏡で見るような小さなモノから手のひらサイズのモノまで高品質のさまざまなバネを製造できるのが強み。日本とインドネシアのそれぞれのニーズに合わせ、地産地消の生産体制を敷いている。

インドネシアの主力は現在、バイク向けのバネ。主要顧客は同国に進出している日系企業だが、日本では受託できないような仕事もとれるようになったという。

インドネシアでは日系企業を中心に2輪車産業が成長してきた。今では1人1台のバイクを持つ家庭も珍しくない。ちょうど同じ時期に工場の稼働を開始した同社には、バイク向けのバネ製造の依頼が相次いだ。

自動車が徐々に家庭に普及し始めている今、自動車向けへの転換を図ろうとしている。小松社長は「細くて小さい当社のバネは、自動車本体には採用されにくい。ただ、バネは内装の電子部品内にも使われる。少しずつシェアを獲得したい」と意気込む。

現在、インドネシアの売り上げが総売り上げに占める割合は8分の1程度。全体の売り上げを伸ばしつつ、割合も高めたい考えだ。

ただ、小松社長はインドネシアの売り上げを伸ばすには注意深く情勢を見る必要があるとする。「法律などがすぐに変わるため、迅速な対応が必要。また、モビリティー関連は市場の動きが速い。すでに、新たな生産拠点に移転しようとしているメーカーもある」と真剣な表情をみせる。

単純なつくりに見えるバネだが、その構造は複雑。一目みただけでは長さ、隙間、直径など全ての精度を判断することはできない。高い技術だけでなく、人の目による検査が欠かせない。小松社長は「どんな機械よりも、人の目が一番いい性能をもっている。インドネシアの従業員は目がいいので助かっているが、人件費の上昇も気になる」と話す。

進出から20年以上がたったが、「海外で部品を売るのがいかに難しいかを痛感している」という。小松社長は「海外では部品を買ってつくるという発想がない国も多い。メーカーは自社の製品を売り込めばいいが、部品は売り込みがとても難しい」と苦笑する。必然的にニーズに合わせたモノづくりが必要になる。

さらに単価の安いバネで利益を出すには、ある程度、量の多い取引が必要となる。量産につながる試作の仕事が最適だが、なかなか難しいのが現状だ。

そんな厳しい状況下でも、精度の高い同社のバネは多様な産業から信頼を得ている。ニーズの的確な把握と高い技術力で生き残りをかける。

※記事提供・日刊工業新聞(門脇花梨 2018/7/4)


バイクの普及を追い風にバネ製造の依頼が相次いだ(インドネシア工場)

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