日刊工業新聞

アイセロー 日・中・マレーシアで連携

防錆フィルム3工場で補完/人材交流、技術・品質など情報共有

アイセロ(愛知県豊橋市、牧野渉社長)は、機能性フィルムやクリーン容器などを手がける。日本やアジア、欧米に販売網を持ち、主力製品の一つである防錆性を有する包装フィルム「ボーセロン」は日本と中国、マレーシアで生産する。マレーシアの工場は2020年をめどに移転拡張し、主要顧客の自動車関連で需要増が見込める東南アジア向けの生産体制を強化する。

中国とマレーシアでは元々、ボーセロンと同じポリエチレン樹脂を用いたゴミ袋やフィルムなどを生産していた。ゴミ袋生産からの撤退を機に、設備の有効活用や日本からの一部の生産移管によるグローバル供給体制確立を目的に、05年にマレーシア子会社のアイセロ・マレーシア(ケダ州)でボーセロンの生産を開始。その後、中国子会社の上海愛興璐塑料包装(上海市)でも始めた。「グローバルな視点で企業の社会的責任を果たす」(牧野社長)必要があると判断した。

原料の樹脂ペレットは、防錆性を持つ種類に切り替えるだけだったが、立ち上げ当初は日本から供給した。その後、現地の石油化学メーカーの原料の品質が確認でき次第、徐々に現地調達を増やしていった。ゴミ袋や従来のフィルム生産で取引先は開拓しており、防錆フィルム向けでも取引を持ちかけ、コスト削減や納期短縮を図った。

生産については、日本のサプライチェーンマネジメント本部がグループ全体を管理し、防錆フィルムの受注量や規模、納期などに応じて日本、中国、マレーシアの3工場に振り分け、バランス調整している。納品先の近くで生産するのが基本で、3工場ともほぼ同じ製品を生産できるが、若干の特異性はある。フィルムのサイズや形状、袋状かシート状かの仕様などによっては最寄りの工場で生産できない場合もあり、残る2工場で調整する。

生産技術や品質管理などで情報共有を図るため、日本と海外工場の人材交流を図っている。製品改良や設備更新、機械トラブルなどがあったときは日本から技術スタッフを派遣する。一方で中国やマレーシアから将来のリーダー候補生などを日本で受け入れ、数カ月から2年程度の研修を行い、技能向上を図っている。

アイセロ・マレーシア(ケダ州)は20年をめどに近接地に移転し、拡張する計画で、近くの工業団地などで候補地を選定している。既存工場の設備が老朽化しており、移転して更新するとともに、東南アジアでの需要増に合わせて生産増強する。投資額は約10億円の見込み。

ボーセロンは自動車部品などの包装が主な用途で、タイやインドネシアなどに拠点を持つ日系自動車メーカーなどからの需要増に応じる。現在100人強の人員も増やす。移転後の既存工場は閉鎖する方針。

今後は「時代や環境の変化に対応して進化し続け、高度な文化生活にいかに貢献するか」(同)をテーマに、新規開拓に向け市場調査を行っている。防錆性を生かせる金属製品向けで、自動車や工作機械向けなどに続く用途を開拓する。

※記事提供:日刊工業新聞(市川哲寛 2018/8/8)

20年に移転・拡張する予定のマレーシアの工場「アイセロ・マレーシア」(ケダ州)

 

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