中野陽介コラム

18【需要対応経済】「プリント写真を売るヒロさん①」(アメリカ / ニューヨーク)

知人の画家が、ニューヨークで15年以上路上ワークをしている人を紹介してくれた。路上でプリント写真を売っているヒロさんだ。中国出身だが日本語がペラペラ。アメリカ人の旦那さんがいて、子どもはいない。
 
「なんでそんなに日本語上手なの?」と聞くと、「1989年の天安門事件をキッカケに、中国にいたらマズイと思って日本に移住したのよ。日本の大学を卒業して貿易会社に7年間勤務してたんだけど、毎日の生活に飽きたし、私のオープンな性格と社内の閉塞的なムードが合わずに脱サラ。その後、ニューヨークに移住したのよ」。
 
この仕事をなぜはじめたのと聞くと、「友達に勧められたのがキッカケね。はじめは自分で撮った写真を路上販売していたんだけど、売れ行きが伸びないから、いまのスタイルに変更したの。気がついたら15年経っているわね(笑)」。
 
ほぼ毎日、夜7時から夜中3時まで路上に出勤しており、「場所はその都度変わるけど、主に64番街。タイムズスクエア周辺の路上が、土日の夜11時以降に開放されるから、その度に真下に移動しているわよ」。

「1日の売上は最高で200ドル、最低で20ドル」と答えるが、隣の絵描きが、最低でも毎日200ドルは稼いでると、コッソリ教えてくれた。単純に計算しても月6,000ドルだ。

ヒロさんと僕が話をしている間も、歩行者が絶えず足を止め、次々と買っていく。2ドルという安さに加え、ニューヨークの土産としても邪魔にならない手頃な大きさの写真だから思わず買ってしまうのだろう。
(4月号へ続く)


中野陽介

芸術家。1987年福岡生まれ。07年渡米、Los Angeles City College卒業。数々の映画制作に参加後、芸術に目覚める。12年 渡タイ、バンコクで芸術家とサラリーマンの2足のわらじ生活を送る。16年に1年間で22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。自作の「芸術入門サイト」(art-geijutsu.com)は10万アクセス突破。作品や活動記録は下記サイト参照。
yosukenakano.com

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