中野陽介コラム

26【見世物経済】「パブリック空間にプライベート空間を作る子どもたち①」(アルゼンチン/ブエノスアイレス)

ブエノスアイレスの中心街を歩いていると、大通りの片隅にふと目に止まるものがあった。

ゴミ山のようにも一瞬見えたが、意図的につくられている何かだ。8~10歳くらいの子どもたち4人がその周りで楽しそうに走り回って遊んでいる。近寄ってみると、それは捨てられた粗大ゴミと段ボールでつくられた子どもたちだけの秘密基地だった。

ここは、秘密基地をつくるにはふさわしくない人通りの多い「パブリック空間」なのだが、そんな場所に「プライベート空間」を自らの力でつくり上げている。今、子どもたちにとって一番必要なのは、大人たちの視線をまったく排除した自分たちだけの空間だったのかもしれない。

表舞台から捨てられたゴミの中から、使えそうなものを本能的触覚で選択し、ありあわせの品で必要なものをつくっている。フランスの文化人類学者レヴィ=ストロースの言う「ブリコラージュ」を目の当たりにしているようだった。

(12月号へ続く)

中野陽介

1987年福岡生まれ。19歳で渡米、Los Angeles City College卒業。23歳で岡本太郎著「今日の芸術」で芸術使命に目覚める。24歳で渡タイ、バンコクでサラリーマンと芸術家の2足のわらじ生活を3年間送る。28歳で1年間に22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。その後、路上ワークの研究を始め、現在、平日はサラリーマン、休日は路上ワーカーという生活を送っている。「路上ワークの幸福論」発売中。
yosukenakano.com

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