中野陽介コラム

27【見世物経済】「パブリック空間にプライベート空間を作る子どもたち」(アルゼンチン/ブエノスアイレス)

(ArayZ 11月号の続き)

パブリックとプライベート。二つの空間の狭間でキャッキャッと無邪気に遊んでいる子どもたち。

僕は感動の高鳴りで思わず足が動き、写真を撮った。

すると、そんな僕の姿をじっと見つめていた一人の女の子が、「お金ちょうだい」と言ってきた。

僕はさらに驚いた。

自分たちが楽しむためにつくられたものだろうと僕は思っていたが、彼女はそれを「見世物経済」のための商品としても捉えていたのだ。

僕は彼女の創造性の豊かさに感動し、ポケットに入っていた小銭をあげた。

「パブリック空間にプライベート空間を作る子どもたち」用画像

彼女は「ありがとう」と言って、何事もなかったかのように秘密基地に戻り、また笑顔で遊び始めた。

彼女のTシャツに書かれていた文字「ユー・アー・ファンタスティック(You are fantastic)」は、彼女に対する僕の気持ちを代弁してくれているかのようだった。

中野陽介

1987年福岡生まれ。19歳で渡米、Los Angeles City College卒業。23歳で岡本太郎著「今日の芸術」で芸術使命に目覚める。24歳で渡タイ、バンコクでサラリーマンと芸術家の2足のわらじ生活を3年間送る。28歳で1年間に22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。その後、路上ワークの研究を始め、現在、平日はサラリーマン、休日は路上ワーカーという生活を送っている。「路上ワークの幸福論」発売中。
yosukenakano.com

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