原宿の代々木公園に向かって歩いていると、優しい歌声が聞こえてきた。日本の路上ミュージシャン・神川圭司だ。パッと見はイカツいが、見た目とは逆に彼の歌と歌詞は優しく心地よい。使い慣れて年季の入った機材。日本の路上ワーク事情も気になったので話しかけてみた。
「こんにちは。いつもここで歌っているんですか?」
「週3回くらいね。週末と平日のどこか1日」
「何時間くらい歌うんですか?」
「週末は午後1時から午後7時くらいまで。平日は仕事後だから午後5時から午後7時くらい」
「どれくらい路上ライブやってるんですか?」
「神戸でもやっていたんだけど、それも合わせると30年くらいはやっているね」
「どれくらいの売り上げがありますか?」
「最低額は0円。最高額は1万円。優しいおばちゃんがずっと音楽を聴いてくれて、世間話をした後にガンバってねと言って1万円をくれた時があった。びっくりしたけど嬉しかった」
「なぜここで歌っているんですか?」
「35年くらい前かな、ここら辺は週末だけ歩行者天国だったんだよ。一世風靡セピア、竹の子族などの路上パフォーマーたちが花を咲かせてデビューしていった場所なんだ。あの感じが好きだったし、同じようなことをやりたいと思ってここで始めた。歩行者天国の人気が出過ぎたと同時に、渋滞に困る人、迷惑に思う人、トラブルを起こす人も出たから、今ではなくなっちゃったけどね」
(6月号へ続く)
中野陽介
1987年福岡生まれ。19歳で渡米し、Los Angeles CityCollege卒業。23歳の時、岡本太郎著「今日の芸術」を読んで衝撃を受ける。24歳で渡タイ、バンコクでサラリーマンと芸術家の二足のワラジ生活を3年間送る。28歳から1年間で22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。旅先で路上ワーカーたちの出会いに感銘を受け、「路上ワークの幸福論」を出版。同書はKinokuniya Bangkok店&EmQuartier店でも発売中。2020年6月3日〜7日まで目黒区美術館で最大規模の絵の展覧会予定。
HP:yosukenakano.com
Instagram:@yousukenakano
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