バンコクの歩道を歩いていると、一瞬目を疑ってしまった。
動くはずがない植木の緑が、向かい側からこちらに近づいてくる。オカシイ。
正体を知って、思わず笑ってしまった。
僕の動揺もつゆ知らず、路上を通り過ぎていったのは植木屋だった。
僕は引き返して、彼女にインタビューしようと試みたが、忙しそうにしていて、残念ながら取材NG。写真だけ撮らせてくれると、彼女はまた歩いて行ってしまった。
豊かな緑が路上を通り過ぎていく。なんて素敵なんだろう。
ここは路上なのにこんな緑に出合うことができ、目にも心にも優しい路上ワーク。
売る本人がそんなことを考えているかはさて置き、コンクリートジャングルの中で「動く森」に遭遇したような気分になって興奮した。
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中野陽介
1987年福岡生まれ。19歳で渡米し、Los Angeles CityCollege卒業。23歳の時、岡本太郎著「今日の芸術」を読んで衝撃を受ける。24歳で渡タイ、バンコクでサラリーマンと芸術家の二足のワラジ生活を3年間送る。28歳から1年間で22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。旅先で路上ワーカーたちの出会いに感銘を受け、「路上ワークの幸福論」を出版。同書はKinokuniya:Bangkok店&EmQuartier店でも発売中。
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