時事通信 特派員リポート

【ベトナム】自動車「関税ゼロ」控え、固まらぬ政策=日本勢、将来性を依然期待(ハノイ支局 冨田共和)

ベトナムは、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国からの輸入自動車の関税を2018年1月に撤廃する。同年以降、タイやインドネシアなどからの輸入車に圧倒され、国内の自動車生産事業が危うくなると懸念されるが、「関税ゼロ」まで残り半年を切っても保護・振興策の基盤が固まっていない。ただ、日本の各社は政策のいかんにかかわらず、ベトナム市場の将来性に依然、魅力を感じている。

部品の免税案

自動車業界関係者によれば、ベトナムの製造コストは周辺諸国より2割程度高い。特別消費税なども上乗せされてさらに割高となるため、国内最大手のチュオンハイ自動車(タコ)に代表される国内メーカーは関税撤廃後、厳しい環境に直面する可能性が大きい。
同国ではチュオンハイの部品現地調達率が20%に満たない現実が示すように、エンジンをはじめ、基幹部品の大半を外部に依存しているのが「最大の泣きどころ」(日本政府関係者)と言える。海外から部品産業を誘致し、コスト低減と技術の導入を図るのが急務だ。

ベトナムは政府を挙げて、「裾野産業の育成に協力してほしい」(グエン・スアン・フック首相)と部品メーカーの投資を呼び掛けているが、政策が定まらないせいで成果は上がっていない。日本政府はベトナムに協力し、自動車産業行動計画の年内策定に向けた作業に着手した。日本の担当者は、部品の問題が柱の一つとの考えを示している。
そうした中でベトナム商工省は、国内で製造された自動車部品の特別消費税を免除する案を打ち出した。コスト削減とともに、優遇姿勢を示して外国からの投資を促す狙いもあるのは間違いない。ただ、「国産部品のみを免税とするのは世界貿易機関(WTO)の定めるルールに抵触する可能性がある」(国際通商筋)との見方が根強く、先行きは不透明だ。

なお消えぬ魅力


トヨタが開いたHVの説明会

ベトナムに進出した日本メーカーに目を転じると、トヨタ自動車は「この国に貢献していく」(木下徹トヨタ・モーター・ベトナム=TMV=社長)と強調し、15年に流れた撤退観測を一蹴。当面は生産車種を絞り、コスト削減と生産効率化を進める。
ホンダ・ベトナムの桑原俊雄社長も記者会見で「現地生産を続ける」と明言。さらに、1995年に商用車生産を開始し、日本勢でも「先発組」の三菱自動車の益子修社長は、世界戦略に関し「ベトナムで何ができるか考えていきたい」と語っている。

昨年、初めて30万台を突破したベトナムの新車販売台数は、20年ごろに2倍の60万台へ拡大する見込みだ。量の増加にとどまらず、環境に配慮したハイブリッド車(HV)などの需要が出てくるとにらみ、準備に取り組む社もある。
トヨタは6月、ハノイでHVの説明会を開き、ベトナムの大気汚染や交通渋滞の現状を踏まえ、HV導入の意義を強調した。木下TMV社長は、「プリウス」などの投入について「時期や価格は未定」としながら、検討課題であることを認めている。

※この記事は時事通信社の提供によるものです。
(2017年7月5日記事)

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