時事通信 特派員リポート

【タイ】ASEAN舞台に「エコ」提起= 首脳会議で持続可能性訴え(バンコク支局 東 敬生)

 東南アジア諸国連合(ASEAN)が6月下旬に開いた首脳会議で、議長国のタイが特にこだわった点がある。「環境に優しい会議」だ。2018年のASEAN全体のプラスチック廃棄物輸入量が16年の3倍近くに急増するなど、域内の環境問題が深刻化する中、タイ政府は加盟各国首脳が顔をそろえる場を利用して啓発活動に取り組んだ。

登録証も椅子も再生紙

 注目の上院は、定数24議席の半数に当たる12議席が改選された。当選者のうちドゥテルテ派の候補は9人に上っタイが掲げた首脳会議のテーマは「持続可能性のためのパートナーシップ」。タイ外務省報道官は会議に先立ち、採択される20近い文書の中で、「中心になるのは会議のテーマに沿った『持続可能性のためのパートナーシップに関する首脳声明』」とPRした。「持続可能性声明」は、安全保障と経済成長、社会・文化の各分野で、持続可能性を追求する重要性をうたっている。首脳会議では、加盟各国が海洋ごみ対策に協力して取り組む姿勢を強調する「バンコク宣言」も採択された。

 「タイは持続可能性に重点を置いており、主催するすべてのASEAN関連会議について、3R(ごみの発生削減、再使用、再生利用)の原則に基づく『エコフレンドリー』『グリーンミーティング』をテーマにした」。取材に応じた外務省報道官はこのように述べ、会議中はプラスチック製品や紙の使用を極力抑える方針を明らかにした。

 国際会議に参加する代表団や報道陣は期間中、顔写真が入った登録証の所持を求められる。登録証は首から下げるひもの先に付けたプラスチック製のケースに入れられることが多い。1月にチェンマイで開かれたASEAN外相会議もそうだった。しかし、首脳会議ではプラスチックケースは使わず、厚紙で作成した登録証に穴を開け、ひもを直接通していた。外務省報道官は「ひもは布製で登録証は再生紙を使っている。いずれも会議終了後に回収し、再利用する」と胸を張った。

 取材に当たった報道陣には再生紙で作られたノート、エコバッグなど、環境保護を意識した記念品が配られた。また、首脳会議の議長を務めたタイのプラユット首相が会議閉幕後に行った記者会見の会場で報道陣に用意された椅子は、再生紙由来の厚紙で作られていた。紙製でも「体重150キロにも耐えられる」(提供した素材大手サイアム・セメント・グループ)という。外務省報道官は「これらの取り組みはすべて、タイ政府が持続可能性と会議のごみ削減に力を入れていることを示す狙いがある」と語った。

冷え過ぎなど課題

 首脳会議の会場となったのはバンコク中心部のホテルで、タクシーを使わなくてもいいよう公共交通機関で行きやすい場所を選んだ。会場の飾り付けには可能な限り再利用可能な材料を使う工夫を施した。会場ではペットボトル入りではなく、瓶入りの飲料水を提供した。

 ただ、記者会見場の椅子については、会場となったホテルに備え付けの椅子を使わず、わざわざ再生紙製を用意したことに疑問の声も上がった。また、「環境に優しい」をうたい文句にしながら、体の芯が凍り付くほど冷房を利かせる過剰サービスは、東南アジアで開かれたこれまでの多くの会議と変わらない。

 取材を終え、会場を出る際、出口に置いてあった登録証回収用の箱をのぞいた。中は空っぽで、登録証は一つも入っていなかった。協力の呼び掛けと周知も課題だ。

 ※この記事は時事通信社の提供によるものです(2019年7月10日掲載)。

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