時事通信 特派員リポート

【オーストラリア】豪州の景気拡大、28年で打ち止め 新型コロナでGDP最大減(シドニー支局 田中 健吾)

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「世界最長」の景気拡大を続けていたオーストラリア経済がリセッション(景気後退)に陥った。今年初めまで続いた大規模森林火災と新型コロナウイルス感染拡大に見舞われ、経済が失速したためだ。最大貿易相手国の中国との関係悪化も懸念され、先行きは予断を許さない状況だ。

「28年間の記録的な景気拡大が正式に終わった。100年に1度のパンデミック(世界的流行)があった。その影響でCOVID-19(新型コロナウイルス)誘導のリセッションとなった」。フライデンバーグ豪財務相は9月2日、4月~6月期の国内総生産(GDP)発表を受けた声明で無念さをにじませた。

4月~6月期の実質GDPは季節調整済みで前期比7.0%減少し、1959年の統計開始以来で最大の落ち込みとなった。1月~3月期も0.3%減で2四半期連続のマイナス成長が確認され、91年7月~9月期以来続いた景気拡大局面が終了した。特に同国経済の6割を占める個人消費が12.1%減と不振だった。

森林火災でも打撃

豪州はこの景気拡大の間、石炭や鉄鉱石など豊富な地下資源を掘り出して輸出することで経済が潤った。世界が2001年前後のITバブル崩壊や、08年のリーマン・ショックに見舞われても、豪州への影響は軽微だった。最近では液化天然ガス(LNG)の輸出も活発で、19年にはカタールを抜いて世界首位に躍進。財政収支も19年4月~6月期に44年ぶりの黒字化を達成した。

だが、約30億匹の野生動物が犠牲となったとされる大規模森林火災では、日本の国土の約3分の1に相当する土地が焼かれ、観光や農家が打撃を受けた。新型コロナでは3月から国全体で外出規制など制限措置が講じられ、店舗が閉鎖されるなど経済活動が大きく停滞した。

対中関係悪化で課題

モリソン豪政権は新型コロナ危機に伴う経済への打撃を緩和するため、雇用維持を目的とした給付金など、3000億豪ドルを超える対策を実施。豪中銀も3月に政策金利を過去最低の0.25%に引き下げ、量的緩和(QE)を初めて導入した。政策を総動員した結果、「経済の悪化は当初予想ほど厳しくはない」(ロウ中銀総裁)と持ちこたえた。

豪州第2の都市メルボルンでは新型コロナ感染の第2波が起きて、夜間外出禁止など厳しい制限が8月から9月末まで続く見込み。今年末までにはプラス成長に転じる可能性があるが、「制限措置が再び実施されなければ」(豪エコノミスト)と新型コロナの封じ込め次第に変わりない。

対外的には、豪州が新型コロナの発生源をめぐる国際調査を求めたことに、中国が反発して豪州産の牛肉や大麦に事実上の制裁を導入した。有力シンクタンクのローウィー国際政策研究所は、豪中の経済的な結びつきが強いとして、豪州が経済回復に向けて「(対中関係の)影響に対処する大きな課題に直面している」と警告した。

※この記事は時事通信社の提供によるものです(2020年9月17日)

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