時事通信 特派員リポート

【中国】不動産大手のドル社債デフォルト続発  外貨調達に暗雲、金融波及に警戒(上海支局 佐藤 雄希)

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中国当局のバブル抑え込みが本格化し、不動産大手各社の資金繰りが悪化する中、関連のドル建て社債のデフォルト(債務不履行)が相次ぎ、海外投資家の間で不安が高まっている。中国は近年、金融市場の対外開放をアピール。株式や債券など金融資産に投資を呼び込み、人民元の国際化に弾みを付ける青写真を描くが、暗雲が漂っている。

デフォルト続々

中国当局のバブル抑え込みが本格化し、不動産大手各社の資金繰りが悪化する中、関連のドル建て社債のデフォルト(債務不履行)が相次ぎ、海外投資家の間で不安が高まっている。中国は近年、金融市場の対外開放をアピール。株式や債券など金融資産に投資を呼び込み、人民元の国際化に弾みを付ける青写真を描くが、暗雲が漂っている。 デフォルト続々

今年に入って10月末までに大手100社のうち華夏幸福、花様年、新力、陽光100、天房、泰禾、藍光発展、泛海、当代置業(未確定)の9社が、オフショア市場で発行したドル建て社債のデフォルトに陥った。未償還額は計280億7300万ドル(約3兆2000億円)に上る。

中国メディアによると、8月末時点で中国のドル社債の発行規模は8614億ドル、不動産関連は2097億ドルと約4分の1を占める。このうち今年は592億ドル、来年は615億ドル、2023年は510億ドル、24年は370億ドルが返済期限を迎える。

企業別で残高が最も多いのは、2兆元(約35兆円)の巨額債務を抱えて経営危機に陥った中国恒大集団(192億ドル)。業界最大手の碧桂園(117億ドル)や中堅の佳兆業(116億ドル)の多さも際立つ。

恒大は9月以降、相次いで返済期限を迎え、その動向は世界的に注目を浴びたが、デフォルト宣告間際に支払いを履行。「海外投資家への返済は後回しにされる」と予想していた市場で意外感が広がった。「国際的な信用失墜を恐れた当局が履行を命じた」との見方もある。ただ、今後も残債の返済期限が続々と到来するため、予断を許さない状況だ。  佳兆業も来年末までに総額43億ドルの返済期限を迎える予定だが、既に保証していた子会社発行の理財商品で支払い不能に陥っており、信用不安が高まっている。

外貨調達に暗雲

中国メディアによると、中国企業が発行したドル社債の8割はアジア系投資家が保有。その多くは中国の金融機関が保有している。

中国は資本流出を警戒し、対外証券投資を厳しく制限しているが、中国の機関投資家は香港などで調達したドルをこうした社債に投じているとみられ、デフォルトが増えると「中国の金融機関の信用が下がり、その外貨調達に影響を及ぼす恐れがある」(金融関係者)。

少子高齢化やコスト上昇で輸出主導型経済からの脱却を迫られる中国は、構造的な経常黒字の縮小に直面。かつて国内総生産(GDP)比で10%に迫った経常黒字比率は18年、1%を割り込んだ。最近は新型コロナウイルスの流行で海外旅行などサービス赤字が急減。防疫成功でモノの輸出が拡大し、経常黒字は大きく回復したが、「一時的な現象」との見方が大勢だ。

当局は黒字縮小を見据え、海外資金を呼び込むため、金融市場の開放を加速している。ただ、今後は米国の金融政策が正常化するにつれ、再び資本流出圧力が高まるとの見方もあり、不動産各社のデフォルトが金融危機の契機とならないか、不安が高まっている。

※この記事は時事通信社の提供によるものです(2021年11月19日掲載)

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