カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行経済レポート 2019年3月号

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タイ経済・月間レポート(2019年3月号)

1月は内需拡大により経済成長が続く

2019年1月のタイ経済は引き続き伸長しています。民間消費、民間投資、および工業生産が拡大しました。外国人旅行者は引き続き増加したものの、前月からやや減速しました。マレーシアからの観光客数の落ち込みが響きました。一方で、輸出の伸びは、米中貿易戦争や世界経済の減速などにより縮小しました。

19年2月の消費者物価の上昇率は、前年同月比0.73%上昇し、20ヵ月連続の上昇となりました。非食品・飲料部門の伸びが7ヵ月ぶりに加速しました。また、食品・飲料部門の伸びも引き続き上昇しました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は同0.60%の上昇で、前月から伸びがほぼ横ばいでした。

19年のタイのHDD輸出は、昨年に引き続き拡大傾向にあります。その輸出量は、2億5,200万~2億6,200万個で、前年比3.6~3.7%の伸びになると予測します。コンピューター向けHDDの輸出拡大が主要なけん引役になります。その主な理由は、「Windows 7」のサポート終了によるパソコンの需要回復と、世界大手のHDDメーカーによるマレーシアからタイへのHDD生産拠点の移管によります。

しかし、近年、コンピューター用ドライブでは、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)がHDDに取って代わっており、17年に31%だったSSDのシェアは、今年43%まで上昇すると見込まれます。よって、19年のコンピューター向けHDDの輸出量は、前年比7.7~12.1%増の1億3,900万~1億4,400万個となる見通しです。

2019年1月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した19年1月の重要な経済指標によると、タイ経済は内需の牽引により引き続き拡大しました。民間消費が拡大を続けた結果、民間投資と工業生産も拡大しました。外国人旅行者が引き続き増加したものの、前月からはやや減速しました。一方で、輸出額は世界的な需要低迷と米中貿易戦争の影響により縮小しました。

1月の民間消費は前年同月比3・3%上昇しました。前月に比べると伸びはやや鈍化しましたが、全ての支出カテゴリーで消費が引き続き拡大しました。農林水産業と非農林水産業の家計の購買力が総じて上向いたことが支援要因となっています。

一方で、民間投資は前年同月比2・1%上昇しました。商用車の購入が同21・6%上昇したほか、建材の販売、機械・設備を中心とした資本財の輸入、国内の機械販売がそれぞれ4・1%、4・0%、2・6%上昇しました。しかし、建設投資は収縮を続けています。

1月の輸出は、前年同月比4・7%縮小しました。多くの物品で輸出が収縮しました。米中貿易戦争や世界経済の減速などによる世界市場における需要の鈍化の影響を受けた電子製品、天然ゴム、ゴム製品などの輸出額が収縮しました。また、原油価格が下落した結果、石油関連製品の輸出も減少しました。

工業生産に関しては、前年同月比0・2%増となり、前月からほぼ横ばいでした。自動車、電化製品、石油製品などの生産は、国内需要が良好に拡大していることに伴い増加しました。しかし、輸出向け製造業は電子製品、ゴム製品などで生産が減少しました。海外からの引き合いの減少によるものです。

観光業では、外国人観光客数が前年同月比4・9%増の370万人となりました。前月に比べると伸びは鈍化しました。マレーシアからの観光客数の落ち込みが響きました。中国、インド、台湾からの観光客数は引き続き増加しています。タイ政府による到着ビザ(査証)の無料化措置が奏功したとみられます。

2019年2月のタイのインフレ率

商務省が発表した19年2月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比0・73%上昇し、20ヵ月連続の上昇となりました。非食品・飲料部門の伸びが7ヵ月ぶりに加速しました。また、食品・飲料部門の伸びも引き続き上昇しました。

品目別にみると、非食品・飲料部門が前年同月比0・09%上昇しました。住宅が同0・68%、衣料・履物が同0・58%上昇する一方、運輸・通信は同0・66%下落しました。食品・飲料部門は同1・89%増となりました。米・粉製品の上昇率が同5・15%、肉・魚が同4・50%、調味料が同2・62%、肉・乳製品が同2・06%上昇しました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0・60%の上昇で、前月から伸びがほぼ横ばいでした。




2019年3月の外為相場

ドル円は3月5日に112円台前半まで上昇しましたが、その後は111円台前半へ持ち直しました。3月12日に発表された米消費物価指数(CPI)では、FRB許容範囲ではありながらも米国の物価の伸びは鈍いことが明らかになりました。FRBの利上げ休止路線を支持する結果を受けて、金利市場は素直に低下しましたがドル円の下値への動きは限定的でした。

また、トランプ米大統領が中国との通商協議について「合意は急いでいない」「米国にとって正しい交渉である必要があり、そうでなければ交渉は行わない」と述べたことで、米中通商合意への期待感も先送りされました。外為市場はドル売りが強まり、ドルは110円台に低下すると予想されます。



2019年のタイのHDD輸出の展望

13~16年の期間、タイのハードディスク駆動装置(HDD)の輸出は受難期で、パソコン需要の激減により年率3・7%も減少を続けました。特にコンピューター向けHDDは年率6・3%減となりました。ただし、17年にはタイに生産拠点を移すメーカーが増えたこともあり、世界のHDD市場におけるタイのシェアは15年当時の51%から75・5%に上昇しました。よって、18年のタイのHDD輸出量は、前年比9・6%増の2億4300万個となりました。

19年のタイのHDD輸出は、昨年に引き続き拡大傾向にあります。その輸出量は、2億5200万~2億6200万個で、前年比3・6~3・7%の伸びになると予測します。コンピューター向けHDDの輸出拡大が主要なけん引役になります。

その主な理由はマイクロソフトが20年1月14日に「Windows 7」のサポートを終了すると宣言したことで、過去6年間落ち込んでいたパソコンの需要が回復する見込みです。また、世界大手のHDDメーカーが、マレーシアでのHDD工場を閉鎖し、タイに生産拠点を移すと発表しました。

しかし、近年、コンピューター用ドライブでは、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)がHDDに取って代わっており、17年に31%だったSSDのシェアは、今年43%まで上昇すると見込まれます。よって、19年のコンピューター向けHDDの輸出量は、前年比7・7~12・1%増の1億3900万~1億4400万個となる見通し です。

エンタープライズ向けHDDに関して、SSDへの転換が進んでいるものの、SSDに比べて割安であることやビックデータ処理での需要が根強いことから堅実に伸びると見られています。また、HDD自身も技術は進歩しており、世界大手のHDDメーカーは最新型のHDDの製造を手掛けています。

これら最新型のHDDでも1ギカバイトあたりのコストはSSDの10分の1以下で、この格差は28年までは持続する見込みです。よって、19年のエンタープライズ向けHDDの輸出量は、前年比1・1~3・2%増の3340万~3410万個となる見通しです。

一方で、ゲーム機やビデオ機器などコンシューマー向け電子機器用HDDと外付けHDDについては、向こう4年間の輸出は0・7~1・0%程度にとどまる見通しです。

※本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。

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