カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行経済レポート 2019年9月号

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タイ経済・月間レポート(2019年9月号)

7月のタイ経済は前月に比べ緩やかな加速傾向

2019年7月のタイ経済は前月に比べ緩やかな加速傾向にありました。輸出全体が8ヵ月ぶりにプラスとなりましたが、米中貿易戦争の過熱や世界経済の減速などにより、金を除いた輸出は縮小しました。外需の落ち込みを主因に、工業生産が縮小しました。一方で、民間消費は引き続き拡大しています。観光業では、中国人旅行者が減少傾向から拡大傾向に転 じ、インド人旅行者の伸びが続いています。19年8月の消費者物価の上昇率は、前年同月比0.52%上昇し、前月から伸びが減速しました。果物・野菜や米・粉製品を中心とした食品・飲料部門の価格上昇が全体を押し上げました。しかし、燃料価格の下落が相殺する形で、今年1月以来の緩やかな上昇率となりました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、同0.41%の上昇で、前月から伸びが加速しました。

カシコンリサーチセンターは、19年のタイの自動車輸出台数を前年比2.7%減の111万台と予測します。乗用車と派生車の乗用ピックアップ(PPV)の輸出は大幅に縮小するものの、ピックアップ・トラックは依然として拡大傾向にあります。19年の輸出台数を車種別で見ると、ピックアップ・トラック、乗用車とPPVは、それぞれ前年比2.4%増の62万6,000台、同7.2%減の39万台、同14.2%減の9万4,000台になると予想します。

長期的なタイのピックアップ・トラック輸出の見通しについて、アジアとオセアニア向けは、タイ以外のピックアップ・トラック生産拠点がほとんどないため、堅調に推移する見込みです。しかしながら、欧州、北米、中東向けは、自動車メーカーが市場の近隣地域で生産拠点を拡大するため、将来的に縮小する可能性があります。

2019年7月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2019年7月の重要な経済指標によると、タイ経済は前月と比べて伸びがわずかに加速しました。輸出が8ヵ月ぶりにプラスとなり、外国人旅行者も増加しました。民間消費も引き続き拡大しています。

7月の民間消費は前年同月比2・6%上昇。前月に比べると伸びが加速しました。その主な牽引役は、半耐久消費財が前年同月比2・6%、サービスが同2・0%、非耐久消費財が同1・7%、耐久消費財が同0・5%上昇しました。しかしながら、旅行者の支出は同2・2%下落しました。

一方で、民間投資は前年同月比0・1%縮小しました。機械・設備を中心とした資本財の輸入が前年同月比8・4%、商用車の購入が同5・2%それぞれ上昇しましたが、建設認可を受けた土地の面積は同8・0%、国内の機械販売は同5・8%、建材の販売は同1・3%それぞれ下落しました。

7月の輸出は、前年同月比3・8%増の210億米ドルとなりました。金の輸出が伸びたことでプラスを維持しましたが、米中貿易摩擦による世界経済の鈍化や、電子部品市場が下降局面にあることなどから、金を除いた輸出額はマイナスとなりました。

工業生産に関しては、前年同月比3・2%減となり、3ヵ月連続でマイナス成長となりました。外需の落ち込みにより、工業生産も縮小しました。

観光業では、外国人観光客数が前年同月比4・7%増の333万人となりました。中国人旅行者が減少傾向から拡大傾向に転じ、インド人旅行者の伸びが続いています。

2019年8月のタイのインフレ率

商務省が発表した19年8月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比0・52%上昇し前月から伸びが減速しましたが、26ヵ月連続で上昇傾向にあります。果物・野菜や米・粉製品を中心とした食品・飲料部門の価格上昇が全体を押し上げました。しかしながら、燃料価格の下落が相殺する形で、今年1月以来の緩やかな上昇率となりました。

品目別にみると、非食品・飲料部門が前年同月比0・67%収縮しました。住宅が同0・30%、娯楽・教育が同0・79%それぞれ上昇した一方、運輸・通信は同2・22%下落し、全体の伸びを押し下げました。一方で、食品・飲料部門は同2・63%増となりました。米・粉製品の上昇率が同7・06%、肉・魚が同3・63%、果物・野菜が同7・23%それぞれ上昇しました。

一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0・49%の上昇で、前月から伸びが加速しました。

2019年8月~9月の外為相場

8月~9月上旬にかけて円相場は対ドルで約7ヵ月ぶりの水準に急進しました。8月12日に円は1ドル105円前半へ反落しました。円高の背景には、米国が始めた利上げが短期的なものにとどまらず本格化するとの見方があります。そして、米中貿易摩擦の激化など円高をもたらすリスク要因も多く見られました。

しかし、9月12日に米中貿易摩擦の緩和期待を支えに円相場は1ドル108円台まで戻りました。

今後、円相場に影響を与える要因は米中貿易摩擦や欧米の中央銀行の金融緩和などです。欧米中央銀行が金融緩和を拡大すれば、円高圧力が強まると予想されます。

ドル・バーツ相場について、8月~9月上旬にかけてバーツ高傾向が継続しました。
8月7日にタイ中央銀行の政策金利引き下げがありましたが、相場の反応は限定的でした。

タイの自動車輸出台数今年は2・7%縮小見込み

19年前半のタイ自動車輸出は、長引く米中貿易摩擦、バーツ高、オーストラリアなど主要な輸出相手国の経済停滞により、落ち込みました。よって、19年上半期のタイ自動車輸出台数は前年比0・4%減の55万9861台になりました。一方で、19年後半のタイ自動車輸出は、上半期と同様のマイナス要因が働く中で、鈍化傾向にあります。

カシコンリサーチセンターは、19年のタイの自動車輸出台数が前年比2・7%減の111万台になると予測します。乗用車と派生車の乗用ピックアップ(PPV)の輸出は大幅に縮小するものの、ピックアップ・トラックは依然として拡大傾向にあります。

19年の輸出台数を車種別で見ると、ピックアップ・トラックは、他の車種が落ち込む中で前年比2・4%増の62万6千台とプラスを維持する見込みです。一方で、乗用車とPPVの輸出台数は、それぞれ同7・2%減の39万台、同14・2%減の9万4千台になると予想します。

長期的なタイのピックアップ・トラック輸出の見通しについて、アジアとオセアニア向けは、タイ以外のピックアップ・トラック生産拠点がほとんどないため、堅調に推移する見込みです。しかしながら、欧州、北米、中東向けは将来的に縮小する可能性があります。

欧州向け輸出に関しては、欧州各国政府がディーゼル・エンジン車の排出ガス規制を強化するほか、関税面でのメリットを求めて自動車メーカーによる現地生産化が進んでおり、タイからの輸出は伸び悩む傾向にあります。

北米向け輸出は、20年に発効する米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)による不確実性に直面する見込みです。USMCA協定は原産地ルールが厳格に運用されるため、加盟国での生産を促すものと見込まれ、タイから北米への輸出は苦戦する見通しです。

また、中東向けも将来的に伸び悩む可能性があります。日本メーカーがより市場に近い欧州や南アフリカなどの場所で生産拠点を拡大し、それらの拠点から輸出する可能性があります。

従って、タイは成長を維持するためにこれらの主要な市場との自由貿易の推進、電動ピックアップなど環境に配慮したピックアップ・トラックの生産を進める必要があります。

※本資料は情報提供を唯一の目的としており、ビジネスの判断材料とするものではありません。掲載されている分析・予測等は、資料制作時点のものであり、今後予告なしに変更されることがあります。また、予測の妥当性や正確性が保証されるものでもありませんし、商業ないし何らかの行動の為に採用することから発生した損害の責任を取れるものでもありません。本資料の予測・分析の妥当性等は、独自でご判断ください。

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