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労働関係法について

 

はじめに

労働関係法(以下「本法」という)は、1975年に制定された労働者側と使用者との交渉手続きや労働組合の設立等について定めた法律である。基本的に本法は民間企業に適用される。労使紛争に関する手続きや労働組合の活動に関連する規定について、労働組合がある会社や今後設置される可能性がある会社では知っておくべきであり、その概要について解説する。

労働協約

従業員が20人以上いる事業所は文書による労働協約を制定する、とされている。当該事業所において労働協約があるかどうか不明の場合には、就業規則が本法に基づく労働協約とみなされる。この労働協約とは、雇用状態に関する使用者と労働者間の、あるいは使用者または使用者協会と労働組合間の合意事項を意味し、基本的には就業規則と同様の内容を含むものである。
労働協約は、使用者と労働者が合意した期間内において、効力を有するが、その期間は3年を超えることはできない。労働協約に基づく期間が終了した場合で新たな協議がなされていない時は、当該労働協約はあと1年適用される。
この労働協約について、その規定に関する要求または改訂要求を行う場合、会社側もしくは従業員側から他方に対し、文書にて通告する必要がある。この要求を他方当事者が受け取った場合、要求を受け取ってから3日以内に双方による協議を開始する、とされている。3日以内に協議がなされなかった、もしくは協議において合意できなかった場合、労働争議(会社と従業員間の対立)が発生したものとみなされる。この時から24時間以内に文書をもって労働争議調停官に通知することにより、通知を受けた日から5日以内に、調停官による調停が行われる。この期間内に合意ができない場合はこの労働争議は合意ができないものとみなされ、会社は作業所閉鎖を、従業員側はストライキを行うことができるとされている。
協議による合意ができた場合には、労働協約を文書にし、会社側及び従業員側双方が署名の上、合意から3日以内に30日間掲示する、とされている。そして会社は合意後15日以内にこの労働協約を届け出る必要がある。このように、労働協約に関する要求については短期間での対応が必要になるため、時期に遅れることがないよう注意する必要がある。

労働組合

雇用に関する利益の追求、保護及び会社と従業員または従業員同士の良好な関係を促進する目的のもと、本法により労働組合の設置が認められている。労働組合は、名称や事務所設置場所、組合費、運営管理等について定めた規約を有し、労働省労働福祉・保護局下の事務所の登記官に登記申請を行う必要がある。
組合員は、労働組合の登記申請者が勤務する会社と同じ会社の従業員であること、もしくは、労働組合の登記申請者が勤務する会社と同業種の会社の従業員であり、かつ15歳以上であること、とされている。この点、雇用、賃金の引き下げ、解雇、報奨支給、罰則適用の権限を有する監督者である従業員は、組合員になることができない。

会社の禁止行為

原則として、本法に基づく従業員や労働組合による要求や活動に対し、会社がこれを妨害する目的での行為や解雇が禁止されている。また、組合員であることを理由とする解雇、従業員が組合員となることの妨害を会社が行うことも禁止されている。


TNY国際法律事務所
日本国弁護士  藤原 杯花
2017年1月よりタイ、TNY国際法律事務所にて執務。TNY国際法律事務所は、日本人弁護士2名が共同代表を務める法律事務所であり、会社設立から規制調査、契約書のリーガルチェック、商標登録申請などのサービスを提供している。

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Contact: info@tny-legal.com

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