【連載23回】但野和博のコンサルコラムサポート実録記 “タイの経理現場より”

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タールア社編(第2回)「代表は国外常駐」

【前回までのあらすじ】
~会社設立後の経理委託の話もそこそこに、中心人物と思しき角さんはおもむろに謄本を差し出してきた。その中に登記されている署名権者は誰もタイには常駐していないようで…~

新規で記帳代行を受ける場合、クライアントにもよるが、それぞれの事情に応じた内容の案内が必要になることがほとんどだ(※1)。
タールア社の会社設立は他社が請け負っており、当社にお声がかかったのは経理代行の段階になってから。設立が他社で行われた案件は特に、初めに何らかの問題などがないか気を付けなければならない。
タールア社とのご縁は、私がタイで事業を開始するに当たり、背中をちょこんと押してもらった戸下さんからご紹介いただいたものだった。戸下さんはすでにタイ進出に関し、ベテランの会計士であり、まさに「先生」と呼ぶのがしっくりくる。タイにおける会計事務所運営では大先輩である。
人材紹介会社が最初にタールア社に紹介した記帳代行業者は、実は戸下さんだった。しかし戸下さんは(まだこの頃は方針を完全に固めてはいなかったのだろうが)、ゆくゆくは記帳代行から身を引き、監査・コンサルティングにサービスのラインナップを絞っていくタイミングにあり、正確に言うと人材紹介会社を経由して、戸下さんから再紹介されたというのが経緯だ。
タールア社がサービス業であったため、サービス業の経験が長い自分にうってつけの案件とも考えてくれたのだと思う。
さて、そのタールア社はオフショア開発の事業を手がけており、BOI認可取得企業でもある。実は角さんに会う少し前に、その紹介の大元である人材紹介会社で、タールア社日本本社の社長である奈良さんと、シンガポール法人からタイ法人設立サポートに来ていた大野さんとはお会いしていた。
この時は、「設立がもうすぐ終わるところなので、記帳代行の提案をしてくれ」ということだけで、相見積もりを前提としたご案内だけさせてもらった。ゆえに、登記内容など詳細まで立ち入ることはしていなかった。(※2)

角さんから見せてもらった謄本に、署名権者としてエントリーされていた3人中2人が、この時の奈良さんと大野さんであった。そして、署名権者が全員タイ国外という事実も、この時は後から実態に合わせて変更すれば良いだろうくらいに安易に考えていた。
これが後々までいろいろな意味で厄介事となるのだが、その時になれば、こちらの話にすぐに耳を傾けて対応してくれるに違いないと高をくくっていたのだ。
(次回に続く)
※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程度の内容の変更等、脚色部分があります

(※1)(※2)
単純な記帳代行とは言っても、入り方(どのフェーズから始めるか)や範囲(月次税務を含むか)などクライアントのニーズは多種多様である。
一番入りやすいのはFS(フィーシビリティースタディ)から受注し、そのクライアントの要望や規模、業種に合った座組みを示し、その後会社設立を請け負い、記帳代行を始めるパターンだ。
但し、FSを他社へ外注というのはほぼクライアント側で対応を終えているのが通常なので、提供側からすると設立から請け負うパターンが最もサービスを適切に組み立てやすい。
また、このサービスは一括りに月次経理代行業務とも言うが、この業務範囲は多岐に渡る。給与計算業務、社会保険申告、税務申告、記帳代行、月次財務諸表報告が通常のフルパッケージだが、クライアントの規模や業種、内部スタッフの習熟度やコンプライアンス上の考え方によっても正解を一つに統一することは難しいと考えている。一部だけ請け負うこともあれば、場合によっては内製化前提でサポートすることもあり、初めてタイに来られるクライアントには、それぞれ便宜的に分類した上記メニューの案内だけで少なくとも1時間は要することもある。
よく内製化の相談も受けるが、月次経理は給与計算業務から始まり、社会保険申告などと、段階を踏んで月次財務諸表報告に向かうにつれて難易度が高くなる。月次財務諸表に至っては日系企業であれば、日本人による案内を希望するのが通常で、場合によっては本社経理との直接の調整や報告を希望することもある。そのため、さすがに現地での内製化は日本人経理スタッフや駐在員を抱えられるような余裕のある規模の会社に限られ、ローカルのアドミンスタッフや経理初級レベルのスタッフでは、ここまでの内製化にはハードルが高い。

 

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、
顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan@aporter.co.th
http://aporter.co.th/

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但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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