【連載】但野和博のコンサルコラム サポート実録記“タイの経理現場より”

mr.tadano

ウイサー社編(6)「機能停止になった入国管理局」

【前回迄のあらすじ】
~発給要件の運用が厳密化しているVISA/WP(ビザ・ワークパーミット)の申請代行業務。数々の不利な条件を何とか克服し、ようやくVISA更新申請に入ろうとした矢先、タイ全土を揺るがす事態が起きてしまったのだった…~

2013年12月、反政府デモは過激になりチェーンワタナにある入国管理局が閉鎖された。VISA申請が不幸にも、まさにこのタイミングに当たってしまったのである。数日後、入国管理局の機能が別の場所へ移されたが、時既に遅し。入国管理局と調整するも、「平常時にならともかく、期限ギリギリのものは受付が難しい」との通り一遍の回答。一旦国外に出るしか手段はない…。
事ここに至って林さんには苦労をかけてしまうが、もはや選択肢としては、一度リセットして再度のVISA申請をするしかなかった ( ※1)
再入国してもらい、仕切り直し。今度はスタッフ数も4人揃った状態で3ヵ月以上就業と、死角はないように思えた。
デモはまだ収束していなかったが、入国管理局も何とか通常機能している。WPは取得済みなのであとはVISA更新だけだ。
それから待つこと2ヵ月超。その間もデモは続いていたため、あまり平和な状況とも言えず、その間に切れてしまった開業時の酒類販売免許の更新申請もこちらで対応することに。そして余裕を見ての再度の申請。
「書類が足りないよ。直前の社会保険申告書も出してね」。
無情なる入国管理局のお役人様の言葉が投げかけられた。
申請には、この月次税務申告書類も求められることから、VISA申請のスケジュール組には申請日選びも重要なポイントとなる。申告納付日ギリギリの場合、1日でも重複するか跨ぐと該当月分のものを求められてしまうので超えたところで準備するか、その前に申請を終わらせることが、タイミングとしては重要だ。
しかし以前も触れたとおり、この社会保険申告書類と税務申告書類には各役所で担当官の署名が必要で、通常その場で署名してくれることはなく、数日預けることになる(※2)。
またしてもギリギリだ。しかもこうも言ってきた。「この事務所の写真だけど、正面ドアの周辺の壁とかも一緒に入れないとダメだよ」。
そこまで厳しいのか~!正直、写真の内容にそこまで記載があるかまでは気が回らなかったが、最近の傾向としてはこの手の指摘も確かにあると聞いていた。目の当たりに経験してしまう形となろうとは。いい加減、指摘慣れしてきたものの、それでも指摘は終わらない…。
( 次回に続く)
※クライアント様の匿名性を保つために社名・人名等をはじめ、事実から離れすぎない程

(※1)
Non-Bビザの場合、通常タイ国外で90日期限のVISAを取得してタイへ入国、その間にWPを取得、VISA更新の条件を満たし、期限を延長して1年でVISAを更新するというのが、これまでのコラムでも記載してきた流れである。本来、この90日の間で条件を満たすべきなのは言うまでもない。今回のような事情は特殊なものの、クライアント側で書類が揃わないなどの事情で間に合わないこともあり、そのような場合、もう一度国外に出てVISAを取得し直す必要があるのだが、申請時に取得理由を厳しく聞かれたり、申請書類を揃え直す必要が出ることが多く、労が多くなるため当然避けるべきである。
(※2)
VISA申請手続き自体を難しくさせている最大の要因は、経理(月次税務)書類提出のスケジュール組みであろう。書類自体の記載内容で微に入り細に入り指摘を受けることはよくあるが、社内の経理部門とのコミュニケーションが必要なスケジュール組みでつまづくことが多い。経理は内製化対応しているにも関わらず、VISA・WPの申請だけ依頼することが多いこともそれが大きな理由と言えよう。失敗できないVISA・WPだけに受ける側としてもこのあたりの覚悟は必要だが、悲しいかなクライアント側ではそこまでの苦労は分かってもらえないことの方が多い。

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Accounting Porter Co., Ltd.
代表者 : 但野和博
所在地 : 24 Prime Building, 12th Fl., Room No.A, Sukhumvit 21 Road (Asoke),
Klongtoey-Nua, Wattana, Bangkok 10110
電話番号 : 02-661-7697
事業内容 : 記帳代行、経理コンサル、進出支援等、
顧客企業の事業の発展に寄与するサービス業
提携先 : 愛宕山総合会計事務所 /
日本 (代表 : 日本国公認会計士相川聡志)
E-mail : kazuhiro.tadan@aporter.co.th
http://aporter.co.th/

 

tadano
但野和博
2012年5月タイ・バンコクにて、Accounting Porter Co., Ltd.を設立。日系企業の進出サポート及び経理を中心としたバックオフィスサポートを提供するサービス業として、同社を運営中。
日本での上場事業会社2社通算6年のCFO経験を活かし、日本本社部門との直接の対応を含み、現場では管理部門の立て直しを含めた相談にも対応している。本コラムでは、タイの経理現場で起きていることを中心に具体的なサポート実例を交えて執筆中。

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