「アジア紙加工研究会」Siam Toppan Packaging 垣根を越えた交流で可能性を広げる、オープンイノベーション。

「アジア紙加工研究会」は現在、タイとベトナムを中心に紙関連企業41社が参加するコミュニティとしてノウハウの配信などの活動を行っている。

発起人である老舗紙加工メーカー・中山商事の中山裕一朗氏と、昨秋入会したサイアムトッパンパッケージング社の河田悟氏、金内大介氏、石川聡子氏が、ざっくばらんに意見交換会を行った。（以下、敬称略）

永続的な企業活動のために

中山　サイアムトッパンパッケージングさんが「アジア紙加工研究会」に参加してくださったきっかけは何だったんですか？

石川　ArayZ６月号の初回掲載記事を見て、当社の存在を多くの方に知っていただける機会になればと思い、参加しました。

河田　実は、私が知ったのは入会後です（笑）。最初は新技術や新素材といった動向を業界の方々と情報交換できる場になればと捉えていましたが、中山社長の日本での活動を拝見し、また紙関連以外にも様々な業界の方が参加されていることを知ってさらに興味が増しています。

中山　サイアムトッパンパッケージングさんは、タイ紙器業界のトップシェアメーカーだと伺いました。

河田　はい。2000年から凸版印刷が筆頭株主になり、紙器・美粧段ボールをメインに扱っています。プロダクトデザイン、構造デザインから製造、販売まで一貫して行うワンストップサービスが強みです。しかし競合は多く、市場やパートナー企業の変化スピードも早い。今後もタイで成長し続けるために、どう紙器パッケージの事業を拡大していくかは重要な課題です。

中山　タイの紙器パッケージは日本とは違いますか？

河田　違いますね。タイ人は美しいパッケージの商品に手を伸ばす傾向が強いため、当社では３Ｄホログラムなどを使用したパッケージも扱っています。また、凸版印刷が持つARやQRを用いた多言語対応技術を活用し、アプリと連動させて動画を表示できる紙器の提供など、付加価値の高い製品で差別化を図っています。

金内　お客様のイメージを元に、構造デザインチームと機能的な工夫を検討してご提案させていただくこともありますし、国際規格の点字印刷など、人々の役に立つ文化の創出も意識しています。

中山　2017年５月には、FSC（森林管理協議会：Forest Stewardship Council®）による認証を取得されていますね。最近、日本でも取得企業が増えてきましたが、タイでは珍しいのではないでしょうか。

河田　単にきれいなパッケージを提供するのではなく、法令に順守した環境下で製品を作ることを経営方針にしているので、当社のような中規模の会社が取得するのは珍しいようですが、同年にはFSCに加え、日系企業では初めてタイ工業省が定める環境配備基準「Green Industry」の最高値であるLevel 5も獲得しました。

日本の技術を、タイの社会で活かす

中山　河田社長のご経歴についても教えてください。

河田　私は1985年に凸版印刷へ入社してから長くエレクトロニクス関連の事業に関わってきました。一度イギリス赴任も経験しています。2015年に生活・産業事業本部に異動になり、2016年より来タイしています。

金内　当社は27年前、食品用のパッケージからスタートしましたが、現在も日用品、電気、文具、玩具まで、業界は問わずニーズがあれば積極的に対応しています。エレクトロニクスも含め、もっといろんな用途に広げていけると思っています。

河田　協会への参加をきっかけに、業界内外の方々との意見交換から新たなアイディアを生み出し、新製品の開発だけでなく環境や人権といった視点からも、紙の新たな可能性を創造していきたいですね。タイの国立チュラロンコン大学には印刷学部があるほどで、そこで学んだタイ人社員の技術やアイディアも取り込んでいけたら面白いなと。

中山　紙製品は石油製品と比較して、パルプが原材料なので、環境保護の観点や世の中の要求の変化によっては可能性の高い製品だと感じています。意外な業界からのお問い合わせもあるので、これからも情報をオープンにすることで、広く知識や技術を集めていきましょう。

左）「Thai Star Packaging Awards 2017」の「Consumer Package」「Eco Package」部門で受賞した、オーガニック米の紙器パッケージ
右）サイアムトッパンパッケージングは、食品に直接触れる一次包材の製造が可能な｢BRC / IOP認証｣を取得、紙器の製造販売をしている