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3.11 メッセージ/工作機械

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早期復旧、デジタル技術駆使

無電源エリアでプリウスの電源を使って食事する、   ジェイテクトの工作機械サポートスタッフ

無電源エリアでプリウスの電源を使って食事する、ジェイテクトの工作機械サポートスタッフ
工作機械メーカーがデジタル技術を駆使して、災害発生時の顧客サポート体制を強化している。客先に納めた機械のデータベース(DB)の活用やIoT(モノのインターネット)サービスとの連携により、迅速かつスムーズな初動とサポートを実現。近年、自然災害が多発化・激甚化する中、顧客の生産活動の継続と早期復旧を支援する上で、デジタルの力の重要性が一層増している(編集委員・土井俊、名古屋編集委員・村国哲也)。

地図に顧客DB

オークマはアフターサービスの担当者に全地球測位システム(GPS)を持たせている。日頃から、各担当者の所在地を本社が確認しながら次の訪問先を指示して効率的な移動に役立てており、災害発生時にも応用して迅速な現場対応を心がけている。
ヤマザキマザックは、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールにより、全国に納入した工作機械製品の情報を地図上でDB化している。通常のアフターサービスに加え、災害時には被災地の顧客と稼働設備をいち早く把握し、早期の安否確認、復旧に生かしている。
ジェイテクトもカスタマーサービス(CS)用DBを災害時の安否確認や普及支援に活用している。地図上で地点と半径を設定すると、円内の顧客と稼働する同社製の工作機械の詳細が表示される。平時はサービス担当者の訪問先検索用だが、震災時には震源地に近い顧客を特定できる。また、被災地での復旧支援用にプラグインハイブリッド車(PHV)「プリウス」も導入している。
こうした取り組みは、実際の災害時の復旧サポートに大いに役立っている。ジェイテクトでは同DBを2020年度は被災地向けに5回利用し、230台以上の工作機械の安否確認に対応した。ヤマザキマザックは、21年2月13日に発生した福島県沖地震の翌朝に社員が出社し、同DBを使ってユーザーの安否を確認した上で現地に担当者を派遣した。

遠隔でサポート

アマダも同地震の際、IoTソリューション「Vファクトリー」の遠隔監視サービスを利用する顧客の工場稼働を迅速に復旧できた事例が複数あったという。地震の揺れによる機械の緊急停止や自動搬送装置のパレット位置のずれをサポートセンターが遠隔で確認し、復旧のための操作支援を行った。自然災害時の遠隔サポートサービス活用は「人的対応の限界を補い、顧客の早期復旧に有効」(Vファクトリー推進部)と強調する。
災害対応への有効性も見据えた技術開発も進む。三菱重工工作機械(滋賀県栗東市)は、スマートグラスなどからの映像を共有し遠隔で各種サポートを行うサービスを開発、21年度にも実用化する。災害時の利用も想定でき、「機械の状況把握や顧客の各種サポートを展開する」(開発担当者)方針だ。
DMG森精機は会員専用サイト「my DMG MORI」向けにサービスリクエスト機能を開発。顧客は同サイトから出張サービスや見積もり依頼を行える。不具合箇所の写真や動画も同時に送付でき、やりとりの回数削減、復旧までの時間短縮が図れる。
※記事提供:日刊工業新聞(2021年3月11日)

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