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「クルマづくり」変化、EV・ガソリン車混流-開発・生産「水平分業」の動きも

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電気自動車(EV)需要の広がりが、車のつくり方に変化をもたらしている。日産自動車は次世代生産システムを導入し、エンジンのみで駆動する車やEVを混流生産する。既存の車メーカーにとってエンジン車を生産しながら、EVをどう効率的に提供していくかは課題の一つ。一方、世界最大の電子機器製造受託サービス(EMS)の鴻海精密工業がEV生産に乗り出すなど新規参入が相次ぎ、開発と生産をすみ分ける動きも広がる。(西沢亮)
▲ EV普及でモノづくりにも変化が求められる
「従来の量産システムではとても対応できない」。日産の坂本秀行副社長は、電動化や自動運転技術の拡大で複雑さが増す次世代車の生産は難易度が上がってきていると話す。
EVやハイブリッド車(HV)といったパワートレーン(駆動装置)に応じ、エンジンやモーターなど部品の組み合わせは複雑化する。駆動装置ごとに専用の生産ラインを設けることも可能だが、環境規制などに左右されるEVの需要予測は難しく、設備投資にはリスクがつきまとう。
日産はロボット活用による自動化を特徴とする次世代生産システムを開発した。同システムにより、ガソリン車とEVなど電動車の混流生産を実現し、地域で異なる電動車需要に柔軟に対応する。

一方、台湾の鴻海は独自のビジネスモデルでEV事業を加速する。2020年10月に「MIH」と呼ぶEV開発用のプラットフォームを発表。「オープン」をコンセプトに掲げ、自動車メーカーなど誰もがMIHをベースにコストを抑えながら、独自のEVを短期間で開発できるとしている。既に日本電産や独ボッシュなど1,200社を超えるサプライヤーがMIHの枠組みに参画。米アップルのスマートフォンなどを製造受託してきた鴻海の実績が多くの企業を引きつける。
今後はサプライヤーなどで構成する連携組織を21年7月に設立。23年にもEVの量産を目指す。公平性確保のため鴻海は、製造受託先の1社として組織に参加する見込み。EVの参入障壁を下げながら量産効果を取り込むスタイルが軌道に乗れば、既存の車各社も無視できない存在になる。
鴻海の試みはスマホのように開発と生産を分担する「水平分業」モデルを車産業にもたらす。こうした動きはハイテク企業を中心に広がり、中国では百度(バイドゥ)、滴滴出行(ディディ)などが現地自動車大手との提携やEVの共同開発を発表。21年1月にはアップルがEV参入に向け、複数の自動車メーカーと交渉していることも明らかになった。
開発から生産まで完成車メーカーが手がけてきた従来の「垂直統合」モデルを揺さぶる可能性が出てきた。
※記事提供:日刊工業新聞(2021年6月21日)

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