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SDGs達成へ課題浮き彫り 日本の現状、4年ぶりに評価

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政府は日本の持続可能な開発目標(SDGs)達成状況をまとめた。ジェンダーギャップ(性別格差)の解消が遅れる一方で、再生可能エネルギーの導入拡大や温室効果ガス排出量の減少を評価した。同時期に発表された海外機関による国別評価で日本は18位となり、17年の11位から順位を下げた。SDGsのゴールの2030年まで残り9年、課題解決による巻き返しが求められる。
国連加盟国は自国のSDGsの達成状況を定期的にまとめている。日本は17年以来4年ぶりに評価し、7月の国連の会議で発表した。

外務省の担当者によると前回は50ページだった報告書は、今回は200ページにまで膨らんだ。それだけ国内でSDGsが推進され、内容に厚みが増した。また評価では「見える化を心がけた」(外務省担当者)という。工夫の一つとして政府側、有識者による民間側の双方から意見を聞き、国内の課題を浮き彫りにした。
ゴール1(貧困)について政府、民間とも十分な所得に満たない家庭で暮らす「子どもの貧困」を注視した。ゴール5(男女平等)についても政府、民間とも女性リーダーが少なく、性別による格差が大きいことを深刻に受け止めた。一方、ゴール7(エネルギー)では、政府は再生エネの導入が着実に進展したと評価したが、民間は脱炭素の目標に向け「再生エネの大幅増加には遠い」とし、認識の違いが明らかになった。
着目点にも違いがあった。ゴール3(健康)について政府は女性の自殺者増加を危惧。一方、民間は新型コロナウイルス感染対策のワクチンを途上国に分配する国際枠組み設立への日本の関与を評価した。ほかにも政府はゴール9(産業)で技術革新の国際指標で日本が高順位であることを評価し、民間はゴール13(気候変動対策)で脱炭素を目指す自治体や企業の増加を評価した。

海外から日本の取り組みはどう評価されているのだろうか。独ベルテルスマン財団などが発表したSDGsの進捗報告書(21年版)によると日本は世界18位となり、20年から1ランク下がり、17年の11位から後退した。ゴール4(教育)や9は達成、5や13は遅れが指摘された。

一層深く取り組むべき時期に

千葉商科大学教授(SDGsコンサルタント)・笹谷秀光氏

新型コロナの大流行はあらためて世界との繋がりを各自に認識させた。まさに「Think Globally, Act Locally(地球規模で考え、足元から行動せよ)」だ。激変する世界のBuild Back Better(より良き回復)に向け、SDGsという羅針盤が必須である。

今回の政府の整理は、コロナ禍でのSDGs達成度についてスナップショットを提供する。SDGsが政策面や各ステークホルダーの活動面で主流化している。

各主体は一刻も早く本業を通じて使いこなし、「SDGsネーティブ」にならなければ世界から取り残されかねない。SDGsに一層深く取り組むべき時期に入った。

※記事提供:日刊工業新聞(2021年8月13日)

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