日経ビジネススクールアジア特別講座バンコクプレセッション『日タイ人材育成フォーラム~戦略的“アジア次世代ビジネスリーダー”育成に向けて~』

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日本経済新聞社とチュラロンコン大学サシン経営管理大学院 は6月8日、「日経ビジネススクールアジア特別講座日タイ人材育成フォーラム」を共催した。日産自動車の志賀俊之副会長、サシン経営管理大学院のシリユッパ・ルンレーンスック准教授、藤岡資正サシン経営管理大学院ファカルティ兼日本センター所長をパネラーに、モデレーターに井口哲也日本経済新聞社アジア編集総局長を迎えたパネルディスカッションでは、国際競争に挑む企業のリーダー人材育成について討論が英語で繰り広げられた。(以下、敬称略)
写真:右から藤岡氏、シリユッパ氏、志賀氏、井口氏(撮影:石田直之)

“ガラスの天井”が日系企業の現地化を妨げている

井口 日本の企業が真のグローバル化を遂げるには、多様性のある経営人材が必要です。日産でも東南アジアからの人材は活躍していますか?

志賀 10名いる執行役員のうち6名が日本人以外で、(社長の)ゴーンのほかアメリカ人、スペイン人、イタリア人らで構成されています。また50名いる役員のうち、20名強が日本人以外です。 残念ながら、まだ東南アジアからの人選はありませんが、タイやインドネシアから日本やイギリスなどの拠点へ研修に参加している人材もいます。

井口 現地法人のトップは現地人材が就くべきでしょうか。

志賀 お客様のニーズや市場を把握しているのも、政府との交渉力を持っているのも現地人材です。もし本当に日本人の能力が高ければ、日本人がトップでも良いですが、現地人材のほうが能力が高ければアンフェアですし、現地人材も失望するでしょう。現地人材のモチベーションを上げるためにも、国籍ではなく、パフォーマンスを見るべきです。

井口 多くの日系企業がタイに投資している一方で、日系企業はタイの新卒人材に人気がないようですが。

藤岡 残念ながら工場でのワーカーを除くと、日系企業は就職先として人気が低く、国際感覚を有した人材ほど日系を避ける傾向にあることが示されています。日本の製品やサービスには魅力を感じているのですが、就職となると「結局日本人が旗をふる」「能力より も年功が優先される」などの理由で敬遠されてしまいます。一部の日系企業は、職場環境や評価制度、条件が他の会社とはどう異なるのか、どのようなビジョンを有し、どのような人材を必要としているのかを十分に伝えることができていません。
よくタイ人は「のんびりし過ぎだ」と言われますが、「コスト削減」と言いながらゴルフや夜の付き合いに社用車を使い、「時間を守る」と言いながら会議の終わりは守らない日本人は、相手側からみると非常に特殊だと思われているのです。先ずは異なった文脈の中 で自らを相対化し、他者への敬意と謙虚さを育むことが大切です。

シリユッパ 日系企業は保守的でアピールをしないため、若者が魅力や刺激を感じられないのです。たとえ優れた研修制度を持っていても、大概は企業のためのもので、人材の能力開発やキャリアパスを考えたものではありません。優秀な人材は、明確なキャリアパス に入社の価値を感じるものです。ワークライフバランスの点でも、「日本人と働く=大変」というマイナスのイメージがあります。

ビジネスの世界に正解はない

志賀 99年にルノーと提携して以降、海外経験のある社員がさらに増えました。言語が障壁になってはならないですが、たとえ英語ができても、本職の能力がないと仕事にはなりません。

藤岡 日本人も英語は苦手ですが、思っていることを伝えるコミュニケーション力がさらに重要です。ツールとしての語学ではなく、文脈を読みながらジェスチャーを交えて動きの中で伝えていくという実践知が大切です。

井口 次世代リーダーを育成するにあたって、日本の教育に対してどのような課題を感じますか。

藤岡 難しい質問ですが、ビジネススクールに関していえば、学際的なアプローチが少ないという点と、国際水準のアカデミックな厳密さとビジネスでの有用性のバランスを担保する、ケースディスカッションというのは一部では行われていますが、フィールドスタ ディーなどを通じたアクションラーニングの場は決定的に欠けていると思います。

志賀 日本以外の大企業で、日本人CEOを見かけることがありませんよね。日本は強いリーダーが育つ教育をしてこなかったということです。先生が授業を主導して、正しい答えが言える人しか当てないシステムでは、生徒は手を挙げたくなくなってしまいます。日本人は “正解”を好みますが、間違いに関係なく、意見が言えないといけない。ビジネスに正解はありません。

日経ビジネススクールアジア特別講座とは

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日本経済新聞社と日経グループアジア本社は、タイ国立大学トップ校であるチュラロンコン大学サシン経営管理大学院と提携し、日経ビジネススクールアジア特別講座をバンコクで開催する。東南アジアの今後の経済に関することや、現地の労務管理や対人スキル、職場のコミュニケーションを円滑にするテーマ を厳選。 「バンコクメインセッション」では、在ASEAN日本人エグゼクティブ、在タイ日本人中堅駐在員、タイ人シニア・ミドルマネジメントを対象とした3つのコースが用意されている。日本人駐在員のスキルやマインドセットの確認と鍛錬、ナショ ナルスタッフの上級職登用への教育メニューとして活用したい。

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