【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

【連載】半歩先読み、タイ自動車市場 ~タイ自動車ユーザの実態と展望~ 第9回

第9回 タイは量販店の時代に差し掛かっている

第9回では、タイにおいて、ユーザ がアフター部品を購入するチャネルの変化について考察する。

経済発展に伴うアフター部品の購入チャネル変化

ユーザがアフター部品を購入するチャネルは、経済発展に伴うニーズ・ 環境変化を受けて段階的に推移していく。日本では、自動車市場が立ち上がった初期には、小規模な修理工場や部品店がアフター部品販売の主要チャネルであった。その後、自動車市場が拡大すると、新業態として量販店が出現した。量販店は、販売量の多さを武器とした価格の安さ、充実した品揃え、そして各店共通の安定したサービスによって、アフター部品の主要チャネルに変わっていった。

図表1は、日本の一人当たり名目GDP推移に、ASEAN各国の現在の一人当たり名目GDPをプロットしたものである。現在のタイの一人当たり名目GDPは、1977年ごろの日本と同じであり、今後チャネル変化が進んで いくと推察される。ASEAN各国でのアフター事業展開を目指す日系企業は、対象国の経済発展スピードからユーザニーズ変化と商流・チャネルの移り変わりを予測し、事業戦略を構築していく必要があるといえる。

量販店に対するユーザの認知度

NRIは、ディーラー保証期間が終わっていて、自らアフターパーツの購入をしているユーザを対象に、量販店の利用実態と認知度を2016年1月に調査した。その結果、都市部・地方部ともに約9割のユーザが、活発に出店を進めるB-Quikを認知していることが確認された(図表2)。

さらに、約3割のユーザは過去にB-Quikを利用したことがあり、アフター部品の購入チャネルとして一定の存在感があるといえる。一方で、その他の量販店については、CockpitやA.C.T が都市部で一定の知名度を確立しているものの、その他の量販店の知名度は限定的であった。アフター部品を扱う日系企業は、チャネル変化という大きな流れをつかみつつ、各量販店の立ち位置を考慮した上で、販売戦略を構築・実行していく必要がある。
次回は、アンケート結果を踏まえて、ユーザのアフター部品購入チャネルの意思決定基準と、部品ごとの購入チャネルの変化の実態(過去・将来)について考察する。

(次回、ArayZ5月号に続く)


執筆者:野村総合研究所タイ
主任コンサルタント
吉村英亮


リサーチアソシエイト
Puncharat Hiransuchalert (Ming)

《業務内容》経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、 情報システム(IT)コンサルティング、産業向け IT システム(ソフ トウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション
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