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世界を牽引したカメラ80年の歴史 オリンパス、モノづくりに見せる“精神”

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オリンパスの歴史は1台の顕微鏡製作から始まった。
その製作から得た“モノづくりの精神”を受け継ぎ、カメラレンズ研究を開始したのは1934年のこと。
2年後の36年、ズイコー(瑞光)レンズが誕生、そのズイコーレンズを搭載したカメラ「セミオリンパスI型」が産声を上げる。
以来80年にわたり、オリンパスは技術者による妥協のない設計や製造で、世界のカメラ市場を牽引してきた。

歴史は顕微鏡製作から

1919年(大正8年)の創立当時、オリンパスは顕微鏡事業と体温計事業を柱とする会社だった。
創業者の山下 長(たけし)氏は、1915年に東京帝国大学法学部法律学科を卒業後、弁護士を開業、その後1年間兵役を勤めた。
18年に貿易会社「常盤商会」に入社し、砂糖で利益を上げた報奨として、常盤商会から出資を受け、弁護士時代から親しかった寺田新太郎氏とともに、顕微鏡の国産化を目指す「株式会社高千穂製作所」を創立する。
寺田氏の製作した顕微鏡は、14年に開催された大正博覧会に出品され、銅賞を獲得。
その後、医療器械の老舗「いわしや」の松本氏の資金援助を受け「エムカテラ」顕微鏡の生産を開始した。山下氏は、寺田氏に顕微鏡作りにかける熱意を伝え、寺田製作所の設備などを現物として出資してもらうとともに、寺田氏を取締役技師長として株式会社高千穂製作所に迎えることとなる。

世界「初」を生み続けた80年

【中判カメラ】
ズイコーレンズを搭載したオリンパスカメラの第1号は、1936年に発売された「セミオリンパスI型」。プラウド社から供給されたセミプラウドボディーに、開発されたばかりのズイコーレンズが組み込まれた。初任給75円の時代に105円という価格の高級機だった。
その2年後の38年に「セミオリンパスII型」が誕生する。レンズ、シャッターに続き、ボディも自社開発に成功し、オール自社製造のカメラとなる。板金プレス製のボディは、セミ判では珍しい横型開きのデザイン。ファインダーは、筒型の逆ガリレオ式だった。
40年には、新設計されたボディーに、最高速1/200秒という自社製コーホー(高峰)シャッターを搭載した6×6判、セミ判兼用機となる「オリンパスシックス」が登場。
そして、日本は戦争の時代へと突入していく。
終戦、そしてカメラ生産の再開。オリンパスシックスの改良型となる「クロームシックスI」が48年に発売された。精度、強度の飛躍的な向上を図るためにダイキャストボディーを採用。上下の飾板に梨地クロームメッキをほどこした美しいボディは、見る人々を魅了した。この頃はじまったカメラの普及が追い風となり、クロームシックスは大人気商品となった。長野県の諏訪工場で生産されたクロームシックスは、その日の夕方、箱やリュックに詰められ、夜汽車を使って東京のカメラ店へ輸送。店頭では人々が行列を作り、クロームシックスの到着を待っていたというエピソードが残っている。
52年発売の「オリンパスフレックスI型」は、オリンパス二眼レフの初代機となる。戦後はじまった二眼レフの大ブームに合わせて開発された。ローライフレックスをモデルにしながらも、より高い性能を求め、多くのオリンパス独自の機能が盛り込まれている。発売価格は4万7000円。当時の初任給7000円の6ヵ月分以上という高価なカメラだった。

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< シックス系カメラの基本形態を確立した「オリンパスシックス」(1940年)>

【35mm 判カメラ】
48年に発売された35mm判カメラ「オリンパス35 I」は、オリンパスが求める「小型、軽量」と「速写性」という2つの目標を具現化したカメラだったが、35mm判カメラの市場はまだ成熟途上だった。
しばらくはクロームシックス、フレックスなど、中判カメラや二眼レフも並行して世に送り出されていたが、市場の中心は徐々に35mm判カメラへと移行。ワイドレンズ専用機、露出計組込機、レンズ交換可能機と、さまざまな「初」のカメラを生み出し、35mm判カメラの可能性を拡げていく。

【オリンパスペン】
ヤワインディングによるシンプルな巻き上げ機構、高品質な描写力を持つDズイコーレンズ、美しく使いやすいデザインといった独創的な発想が凝縮された「オリンパスペン」。60〜70年代にかけて、ハーフサイズカメラの一大ブームを引き起こし、シリーズ累計販売台数は1700万台を超える。この後、伝説のハーフサイズ一眼レフシステム、ペンFシリーズを生み出す。

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<ペンカメラが広く普及する原動力となった「オリンパスペンEE」(1961年)>

【OMシリーズ】
一眼レフカメラが抱えていた「大きい」「重い」「シャッターの作動音、ショックが大きい」という3つの欠点を追放したのが「OMシリーズ」だった。世界最小最軽量のボディと「宇宙からバクテリアまで」というコンセプトを実現するための壮大なシステムで、大ヒットシリーズとなった。
設計や製造に関わる人々の一切の妥協を許さず、「たとえ極小のビスでも、真鍮ではなく、わずかに軽い鉄を用いる」など、重量軽減のために費やされた尽力は相当なものだった。

【デジタルカメラ】
黎明期、あたかもパソコンの周辺機器のような扱いであったデジタルカメラ。オリンパスは、それまでの銀塩カメラに置き換わるような、高画質で使いやすいデジタルカメラの開発に力を注ぐ。
96年、高画質のデジタルカメラを普及価格帯で発売し、デジタルカメラの高画質化、高画素化の牽引役を続け、デジタルカメラ市場は短期間のうちに銀塩カメラ市場をしのぐ大型市場に成長することになる。

【デジタル一眼レフ】
圧倒的な高画質で、デジタル一眼レフ市場に大きなインパクトを与えた「C― 1400L」。このカメラを皮切りに、高性能ズームレンズを搭載したレンズ固定式デジタル一眼レフシリーズを展開、2003年には、レンズ交換式のデジタル一眼レフ市場に参入し。既存の35mm一眼レフシステムに縛られている同業他社をよそ目に、フォーサーズシステム規格に準拠したデジタル専用設計の小型高性能レンズシステムを開発。カメラ側には、広いダイナミックレンジと豊かな階調表現を特長とするフルフレームCCDを採用した。ここに、プロも認める、高画質のレンズ交換式デジタル一眼レフシステムが誕生する。

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