PwC タイビジネススタディ

PwC タイ税務スタディ 利益送金税の取扱い

<質問>

タイで駐在員事務所の設立を計画しています。税務上の留意点は何ですか?

1.駐在員事務所の意

一般的に駐在員事務所の主たる業務は、本社に対して以下のサービスを提供することです。
(1)タイの情報をレポートすること
(2)本社商品に関して、タイの代理店や顧客に助言を行ったり、新商品・新サービスについて情報提供をすること
(3)本社が購入する商品・サービスの品質管理や仕入先の開拓を行うこと

駐在員事務所は、営業活動(例:入札、受注、契約締結)を含むいかなる収益事業活動も行うことができません。したがって、駐在員事務所では費用のみが発生し、課税所得は発生しません。
タイでは、外国人事業法(Foreign Business Act B.E.2542(A.D.1999)、以下「FBA」)により、外国企業が駐在員事務所をタイに設ける場合には、商務省の許認可を得る必要があります。FBAでは、「駐在員事務所」という語句を直接的に用いておりませんが、外国企業が前述のサービス提供を主業務とする拠点を設ける場合には、商務省への許認可申請を行わなければなりません。
商務省の許認可が得られた場合、駐在員事務所もタイの拠点として、歳入法典第65条に基づき年度所得に対する税務申告をする必要があります。もちろん駐在員事務所はその事業の性質上、課税所得が通常生じないため、原則として納税義務は生じません。

2.税務上の取扱い

歳入局は駐在員事務所の税務に関する指針として、1986年に歳入局告示を発行しています。この告示によれば、駐在員事務所が本社だけにサービス提供を行っている場合の本社からの補助金については、税務上、課税所得として扱われません。
他方、駐在員事務所が本社以外にもサービス提供を行っているのであれば、当該サービスが有料であるかどうかに関わらず、タイにおいて収益事業を行っているとみなされます。この場合には、いかなるサービスから得られた収益であろうと、税務計算上、課税所得に含めることが要請されます。
通常、駐在員事務所は非課税法人ですが、歳入法典第67条bis、第68条に基づいた法人税申告書(監査済財務諸表添付)を提出しなくてはなりません。すなわち、駐在員事務所であっても、毎年2回、中間および年次の法人税申告書を提出しなければなりません。

①中間申告書(Phor Ngor D or 51)は事業年度において6ヵ月経過日から2ヵ月以内に提出しなければなりません(事業年度が1月1日から開始する場合、6ヵ月経過日は6月30日となり、中間申告書の提出期限は8月31日)。一般的に中間申告書においては、当該事業年度の年間予想利益を記載する必要がありますが、駐在員事務所には課税所得が生じないため、中間申告書における予想課税所得はゼロとなり、納税額は発生しません。

②年度申告書(Phor Ngor D or 50)は事業年度末日から150日以内に提出され、同時に納税も行わなければなりません(事業年度末日が12月31日である場合、年度申告書の提出期限は5月30日)。この場合も、駐在員事務所には課税所得は生じないため、年度申告書における課税所得はゼロとなり、納税額は発生しません。

法人税申告書提出義務の他に、駐在員事務所は他者に対する特定の支払いについて源泉徴収義務を負っています。例えば賃借料は5%、サービス料は3%、保険料や交通費は1%、従業員に対する給与については支給額に応じた税率分を徴収することになります。
上記の支払い全て(給料を除く)について、対価の受領者が法人である場合、駐在員事務所は支払月の末日から7日以内に、申告書Phor Ngor Dor 53を提出し、源泉税を納税する義務があります。また、期日までに申告・納税を怠った場合には、加算税や延滞税を加えて納税する義務が生じます。

◎このコラムは「時事速報BANGKOK」で以下年月に掲載されたものです。
2016年8月3日、9月7日

PricewaterhouseCoopers Legal & Tax Consultants Ltd.
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